2018.0226

入学前教育の事例③近畿大学~実施結果に基づく個別指導の強化

入学前教育・初年次教育

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3行でわかるこの記事のポイント

●スクーリングは課題解決型のグループワークをメインに
●提出課題で入学後の学びに向かうモチベーションを育てる
●プログラム実施で得られるデータでエンロールメントマネジメント体制の確立へ

2020年度からの入試改革では、特に12月以前に入学手続きをした者に対して入学前教育を積極的に実施することになっている。現行入試の下でも、高大接続の観点から入学前教育に取り組む大学が増えているが、想定通りの効果が上がらず見直しを迫られるケースもある。そこで、入学前教育の実質化に取り組み、課題を解決した大学の事例を随時、紹介する。3回目は近畿大学産業理工学部のプログラム見直しについて、学部長補佐の日髙健教授に聞いた。


各学科独自の提出課題は作問、添削共に教員の負荷が大きい

 学力試験を受けずに本学部に入学する1年生の割合は、50%弱。彼らと学力試験を経た入学者の間には、モチベーションや学習姿勢に大きな差があった。
 この差を縮めようと、2000年代後半から入学前教育を実施しており、2009年からスクーリングと添削課題を課していた。ただしスクーリングについては教員による講義形式のため、学生の主体性への働きかけが弱いという懸念点があった。添削課題については、学科ごとに独自の内容を課しており統一した成果測定ができない、作問や添削にかかる教員の負担が大きい、といった課題があった。
 最初に改善を検討したのはスクーリングだった。グループワークによるアクティブラーニングで学生のモチベーションを上げている大学があると聞き、外部委託の入学前教育プログラムで課題解決型のグループワーク(内容は、学科の特徴を活かした商品開発・技術開発など)を導入した。ファシリテーターに在学生を起用し、成長後の姿をイメージできるようにした点が特徴で、実は、在学生のモチベーションを上げることもねらいの一つだ。
 次いでこれに、学部内で方法を統一した形で、提出課題を加えることにした。新しい入学前教育プログラムは単なる教科学習のリメディアルではなく、入学後の学びに向かうモチベーションを育てられる点に期待が持てた。また、実施後に提供されるデータが詳細であり、入学後の学生個別データとの連結を構想できることから、導入を決めた。

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得られたデータを活用して個別指導をより手厚く

 各学科が個別に課題を出していたときに比べ、課題提出率は大幅に向上している。また入学前教育だけが要因であるとは限らないが、教員間ではここ1、2年、入学者の学習姿勢に対して好意的な評判があがっている。
 今後は、提供された個人別データを他のアセスメントの結果や入学後のデータと連結させて、傾向分析を行いたいと考えている。例えば、『入学前教育プログラム』の実施結果と入学後の学習意欲に相関があるとわかれば、学習意欲の低下が見込まれる学生を入学直後からフォローできる。将来的には、蓄積されたデータから成績不振や単位不足に陥りやすい学生の傾向を掴み、一定の傾向を持つ学生が現れたら教職員に知らせるしくみもつくれるかもしれない。
 本学部の特色の一つは、個別指導の手厚さだ。全学科、1年次から基礎ゼミが設けられており、担当教員が学生一人ひとりに目を配っている。保護者懇談会では、学生を交えた三者面談も行っている。こうした個別指導の場でも、『入学前教育プログラム』で得られたデータなどを活用する予定だ。

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