2018.0122

佐賀大の入試改革<上>タブレット入試で類題に再挑戦させ学習力を評価

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3行でわかるこの記事のポイント

●理系2学部のセンター試験を課さない推薦入試で導入
●「解答完了」で即時採点し、間違えた問題の解説と再チャレンジ問題を表示
●既習の知識に加え初出分野の学習力も確認

佐賀大学は2018年度入試でタブレットを使う試験を実施した。さらに、2019年度入試では一般入試で主体性を評価・加点する特色加点制度もスタート。文部科学省が検討課題に挙げるCBT、および多くの大学が課題とする一般入試における主体性の評価等、入試改革の重要テーマに先行的に挑む。これら2つの新入試を2回に分けて概観し、共通する同大学の理念を紹介する。初回のテーマは先ごろ実施されたタブレット入試。その特色とねらいとは―。
*佐賀大学のこれまでの入試改革はこちら


●学科が指定する教科・科目の教科書レベル10問程度を出題

 佐賀大学は2017年12月、理工学部と農学部の推薦入試でタブレット(iPad)を使う試験を実施した。同大学によると、タブレット入試は国内初。センター試験を課さない推薦入試で、65人が受験した。教科書レベルの問題で基礎学力と学習力を評価した。

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 数学・物理・化学・生物・英語の5科目について、従来の口頭試問を移行する形で実施。試験開始前に30分間タブレットの操作方法などを説明し、学科が指定する教科・科目について60分間で10問程度を出題した。時間内に受験者が解答を確定させると、即座に自動採点して不正解だった問題一覧を表示。それらについてタブレットで解説を示したうえで類似の問題を出し、「学習する能力」も確認した。再チャレンジ問題で正解した場合、各学科が定めた基準に基づいて採点し、最終的な得点は本人には通知しない。

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●トラブルによる"ロスタイム"にも受験者単位で対応が可能 

 全員の平均点や設問ごとの正答率、および各受験者の正誤等の資料を直後に行う面接で使用。再チャレンジでも解けなかった問題を授業で習ったかたずねたり、満点に近い受験者については理解度をより詳しく確認したりした。アドミッションセンターの西郡大教授は「理系学部で重視する基礎学力を面接まで含めて多面的に深く確認することができた」と振り返る。
 今回のタブレット入試では音声や動画は使わず文章や図のみで、ペーパーテストに比較的近い形になった。最初に全ての問題を確認して任意の順番で解いたり、元の問題に戻って訂正したりすることもできる。解答中だけでなく、解説を読む時もメモを取ることを認め、普段の学習行動が反映できるようにした。地震や停電、体調不良など個人のトラブルも含め、試験が中断した場合、認証コードによる制御で正確な残り時間で再開できる仕組みも備えた。再チャレンジ分を含めて問題を蓄積していくため、問題内容は公表しない。

適性検査や小論文でもタブレットの活用を検討

 佐賀大学はCBTの導入に積極的で、今回実施した基礎学力・学習力評価型に加え、思考力評価型、英語4技能型、適性評価型という4つのタイプで開発に取り組んでいる。大量の解答の採点を効率化すること以上に、紙のテストでは評価が技術的に難しい領域をデジタル技術によって評価することが主たるねらいだ。今回のタブレット入試は、未履修の分野でも解説が示されれば理解できるかどうかで大学入学後の学習力を測ろうというもの。
 高校の協力を得て試行版を開発中の思考力評価型CBTでは、実験の動画を見せて観察に基づく科学的思考力を評価する、多数の資料や簡易なデータベースから必要な情報を取り出して分析・判断を加える力を評価するといった内容を検討している。
 2019年度入試では、教育学部英語分野のAO入試の適性検査で英語4技能試験を行い,そのうち「聞く」と「話す」についてタブレット入試を実施する。
 思考力評価型の一つとして検討中の小論文では、ストーリ性を持った動画、およびそれと対立する主張を示した資料等から自身の考えをまとめて論述させるなど、ペーパーテストでは問えなかった思考力や判断力を評価する案が出ている。


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