入学前教育の事例①北海道文教大学~専門の先取りと学習習慣の醸成
入学前教育・初年次教育
2017.1225
入学前教育・初年次教育
3行でわかるこの記事のポイント
●「基礎学力はあるのに低迷する学生」への対応が課題
●4年間の準備態勢を整えることを重視
●今後は入試や入学後の成績との相関など、データ活用を推進
2020年度からの入試改革では、特に12月以前に入学手続きをした者に対して入学前教育を積極的に実施することになっている。現行入試の下でも、高大接続の観点から入学前教育に取り組む大学が増えているが、想定通りの効果が上がらず見直しを迫られるケースもある。そこで、入学前教育の実質化に取り組み、課題を解決した大学の事例を随時、紹介する。初回は北海道文教大学での新規導入について、人間科学部の木村浩一教授と入試広報部の新田隆部長に聞いた。
看護学科では入学後、資格取得を目指してコンスタントに課題を消化していく必要がある。また、常に5分前に集合するなど、医療人としての規律も守らなければいけない。ルーズな学生はカリキュラムについていくことが難しく、「基礎学力はあるのに低迷する」学生が出てくる。外部委託で導入した入学前教育プログラムは、課題の提出状況などから個々の新入生の特徴を読み取れるので、学力だけでなく学習姿勢を重視する医療系の学科には特に有効ではないかと思う。テキストは高校の教科の意義を理解させる構成であるため、学習習慣の維持にも役立つと考えた。
実施後、結果報告の場に複数の教員を招いたところ、データを入学者の様子と照らし合わせて納得を得たようで、傾向分析に強い関心を示していた。今後、追跡調査等に乗り出す布石になるのではないかと期待している(新田部長)。
入学後の個々の力の差の拡大、特に退学者や国家試験不合格者がみられる下位3分の1の底上げが健康栄養学科の課題。これに対応するため、入学前に教員が自分の専門分野から課題を出したり、入学後に化学と生物の学力テストを行ったりしていたが、どちらもほぼ「やりっぱなし」で、効果検証や結果を受けての具体的な対策は行えていなかった。
そんな折に新田部長から、看護学科で実施していた入学前教育プログラムの紹介を受けた。唐突に問題を解かせるのではなく、テキストで意義や内容を理解したうえで演習できること、添削された答案を見てできなかった問題を復習できること、教員に詳細な実施結果データが提供されることが、底上げに効果を発揮しそうだと考えて導入を決めた。
対象を一般入試による入学者まで広げたのは、入学後の学習に課題がある学生は早期合格者に限らないためだ。一般入試合格者は4月末までかけて取り組ませている。学力を含めた詳細な分析が提供されるため、入学後の学力テストは取りやめた。
今後は入試や入学後の成績との相関を調べるなど、データの活用を進めていく。新入生について教員からは「例年に比べ、問いかけに対して的確な答えが返ってくる」といった声が出ている。入学前教育プログラムがどの程度影響しているのか、分析してみたい。国家試験まで追跡調査を行い、合格に至る学生、至らない学生の傾向を確認することが当面の目標だ。また、入学前教育で学習姿勢に不安が発覚した学生や、授業理解がおぼつかない学生を上級生も指導するしくみを目下構築している(木村教授)。
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