2021.1109

私学助成は「教育の質の指標」による傾斜配分のメリハリを強化

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3行でわかるこの記事のポイント

●取り組み度合いによる増減率を「-5%~+5%」から「-6%~+6%」に
●「ガバナンス・コードの遵守」を評価項目に追加
●「GPA制度の活用」の評価基準は「全学部等での実施」に引き上げ

私立大学等経常費補助金の傾斜配分に反映される「私立大学等改革総合支援事業」「教育の質に係る客観的指標」の調査票の提出期限は11月下旬となっている。「教育の質に係る客観的指標」について前年度からの変更点は少ないが、大学のガバナンスのあり方に対して社会から厳しい視線が向けられる中、評価項目にガバナンス強化への取り組みが加えられ、補助金の傾斜配分に一層のメリハリがつけられたことが注目される。

●ガバナンス・コードの明示・遵守・適合状況の公表をチェック

 2018年度から導入された「教育の質に係る客観的指標」(以下、「教育の質の指標」)は、大学を運営する学校法人に標準的に求められる取り組みを評価項目にして得点化。総合点に応じて一般補助を傾斜配分する仕組みだ。
 2021年度の「教育の質の指標」の評価項目は前年度から小幅な変更にとどまり、「ガバナンス・コードの遵守」が新たに追加されて全16項目となった。
 ガバナンス・コードとは、大学がガバナンスの強化によって社会の信頼を得ることを目的に、各学校法人が定める自主的な行動基準のこと。私立学校法をはじめとする法令に一律に縛られるのではなく、私立大学の自主性・自律性を発揮して社会の期待に応えられる運営を自ら宣言・約束すべきという考えに基づき、策定・公表・遵守が求められている。
 日本私立大学連盟と日本私立大学協会はそれぞれ、2019年に大学団体としてのガバナンス・コードを策定。加盟校はこれらに準じる形で自学のガバナンス・コードを策定してきた。
 「学校法人のガバナンスに関する有識者会議」が今年3月にまとめた「学校法人のガバナンスの発揮に向けた今後の取組の基本的な方向性」では、「ガバナンス・コードは、遵守状況の公表を推進する」と提起された。これを受け、「ガバナンス・コードの遵守」が私立大学の取り組むべき標準的な課題として「教育の質の指標」に追加された。
 評価項目では、ガバナンス・コードを「明示するとともにその遵守に取り組み、または適合状況を公表しているか」と問い、「ガバナンス・コードの原則の実施状況を点検し、公表している」「ガバナンス・コードを策定し、公表している」「いずれにも該当しない」という3段階評価になっている。

●各大学での取り組みが進んだ項目は配点を引き下げ

 ガバナンス・コード以外の評価項目は、配点や評価基準の調整にとどまった。
「全学的な教学マネジメント体制の構築」については、「各学部等の取り組みについて3つのポリシーを踏まえた適切性にかかる点検・評価の状況を活用している」場合の配点が引き下げられた。「情報の公表」についても、「『学修時間または学修実態』『授業評価結果』『学修成果』の全てについて、経年比較可能な数値データを公表している」場合の配点が引き下げられた。いずれも「教育の質の指標」としての継続的なチェックによって各大学の取り組みが進んだことを受けた変更だ。標準的に求められる取り組みとして項目を残しつつ、相対的な重み付けを下げた。
 一方、「GPA制度を導入し、学生自身の学修成果把握のために活用しているか」で得点するためには、従来の「活用している」ではなく「全学部等での実施」が必要になった。各大学での取り組みが進んできたことを受け、ステップアップを促すべく全学的な実施へとハードルを上げた。同様に、「学生による授業評価の結果を分析し、授業の改善を図るための制度的取り組みを行っているか」で得点するには、従来の「行っている」から「全学部等で実施している」ことが求められるようになった。

●4年間で増減率の幅を段階的に拡大

 「教育の質の指標」に基づく一般補助の増減率は、前年度までの「-5%~+5%の11段階」から「-6%~+6%の13段階」になった。「-2%~+2%の5段階」からスタートして増減の幅が徐々に拡大。教育の質保証に積極的な大学には補助金を手厚く配分し、そうでない大学は減らすというメリハリが強化されている。
 文科省によると、前年度までの実際の増減率は「+1%~+5%」の法人と「0%~-5%」の法人がほぼ同数で、±1%のゾーンに集中する傾向にあるという。