2020.0706

ベネッセ入試結果調査② 入定厳格化の影響は難関大から中堅大に拡大

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3行でわかるこの記事のポイント

●MARCHでは2019年度入試から難化が緩和し、合格率が上昇
●中堅私大では難関大と同様の傾向が1年遅れて出現
●2021年度入試の共通テストは従来の日程に加え、1月末にも実施

ベネッセコーポレーションは全国の高校の協力の下、2020年度入試の結果をまとめた。ベネッセ教育情報センターの分析に基づいて2020年度の入試結果を解説するシリーズの2回目は、私立大学における入学定員管理厳格化の影響を取り上げる。さらに、新型コロナウイルス問題で不透明感が増していた2021年度入試の日程等にも触れる。

*各データは、特にことわりがない限りベネッセの調査によるもので、大学の公表数値を基にしたデータは5月中旬までに収集・確認できた情報を反映している。
*各データはベネッセの分類・集計によるもので、各大学が公表している数値とは異なる場合がある。
ベネッセ入試結果調査① 国公立、私立とも志願者減、私立は14年ぶり


●MARCH文系の合格率は2016年度から2年間で約10ポイント低下

 前回も示した通り、2020年度入試における私立大学の一般方式志願者数は246万8186人で対前年指数101と微増。一方のセンター利用方式は志願者数114万4486人で対前年指数91と大きく減少、センター後期は指数84まで落ち込んだ。一般・センターを合わせた私立大学の志願者指数は97で、14年ぶりの減少となった。
 近年、私立大学の入試の最大のトピックであった入定厳格化による合格者絞り込み、入試の難化はどう変化してきたのか。
 従来、MARCH文系学部のボリュームゾーンであった偏差値60~65の受験生の合格率の推移は下表の通り。2016年度から2018年度にかけて難化が進み、2年間で一般方式は10ポイント、センター利用方式は14ポイントも合格率が低下。その後は2年連続して上昇している。

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 その下のグラフで他の偏差値帯について見ると偏差値70~75を除いて、上述した偏差値60~65と同じ傾向が見られる。つまり、入定厳格化による難関私立大学の難化は2019年度以降、収束の方向にあり、合格率が回復しつつある。
 合格率を志願者数、入試状況と合わせてまとめたのが下の表。難関私立大学は合格者の絞り込みに対する不安から2019年度以降、受験生の敬遠が顕著になって志願者数が減少。一方で大学側は、私学助成が不交付となる入定厳格化の段階的強化が一段落したのを受けて合格者数を増やした。その結果、合格率が回復して難化傾向に歯止めがかかった-という読み解きができる。

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 中堅私立大学では難関大学と同様の傾向が1年遅れて現れている。つまり、入定厳格化の影響は難関大学から徐々に中堅大学に広がってきていると言えそうだ。

●次年度入試の共通テストは多くの受験生が初回日程で受験する見通し

 次に、2021年度入試について簡単に触れておく。文部科学省は6月19日に「大学入学者選抜実施要項」を発表、これを受けて6月30日には入試センターが「大学入学共通テスト実施要項」を発表した。
 これらでは、入試日程について次のように示された。①共通テストは当初予定通りの1月16、17日(日程1)に加え、同月30、31日(日程2)にも実施。日程2は日程1の追試験として、およびコロナ禍による学習の遅れに対応するために設定され、学習の遅れを理由とする場合には校長が承認する現役高校生が出願できる、②病気等のため日程2を受けられなかった受験生への対応として2月13、14日に「特例追試」を実施、③総合型選抜の出願は本来の規定より2週間遅い9月15日以降とし、学校推薦型の出願は規定通り11月以降とする。
 国公立大学の二次試験、および私立大学の一般入試の日程変更については特に示されていない。共通テストの日程2を受験するとこれら二次試験、一般入試の対策期間がなくなるため、多くの受験生は日程1で受験すると予想される。
 日程1、日程2とも大学への成績提供は従来のセンター試験より1週間遅い2月8日以降になる。私立大学にとってはセンター利用方式の合否判定が遅れることになり、例年、2月はじめからスタートする一般入試の日程の組み方が極めて厳しくなりそうだ。文科省は「特例追試」の受験者も共通テスト利用方式に出願できるよう大学に配慮を求めており、これにどう対応するかも難しい課題だ。

●努力のプロセスの評価など、総合型選抜等で高校側への配慮を要請

 一方、文科省は総合型選抜・学校推薦型選抜においても高校の臨時休業に配慮した実施を求めた。具体的には、「部活動等の大会や資格・検定試験等の中止・延期が志願者の不利益とならないよう、努力のプロセスや学ぼうとする意欲を多面的・総合的に評価する」「感染症の拡大防止に留意してICTの活用などによって選抜方法を工夫する」といった内容だ。
 大学は従来の推薦・AO入試の「お得意様」の高校との情報交換に努め、自学の選考方法にどんな配慮が期待されているか把握することが大切だ。高校教員が生徒に薦めることができ、生徒にとって受けやすく、かつチャレンジのしがいがある総合型選抜・学校推薦型選抜入試となるよう早急な再検討が必要だろう。