乗り切ろう!コロナ危機⑩ 学生に加え受験生の経済支援と広報も重要
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2020.0615
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3行でわかるこの記事のポイント
●8割の大学で在学生に対する支援を実施
●高校生の保護者の7割が教育費について不安を抱えている
●経済支援の情報は募集広報の重要なポイントに
コロナ禍の影響で学費や生活費に困る学生に対して、多くの大学がさまざまな経済支援を実施している。支援策の有無は、教育費に不安を抱える受験生やその保護者にとって、志望校を決めるポイントの一つとなりそうだ。
多くの学生がコロナ禍で家計が悪化したり、学費や生活費のためのアルバイトができなくなったりしている。進研アドが5月に実施した調査によると8割の大学が、在学生に対する経済的な支援を実施、または検討している。
その内容はさまざまだが、一番多いのは現金の給付・補助。休学者や留学者も含む全学生に一律に支給、新入生のみに支給、家計が急変した学生や一人暮らしの学生からの申請に応じて支給するケースなどがある。
支給額は5万円前後が多いが、状況によっては「遠隔授業環境整備支援 7 万円」「自宅外通学生への緊急支援 3 万円」「家計が急変した学生・保護者への支援10万円」の計20万円を支給(群馬医療福祉大学・短大)、家計が急変した学生に対し文系30万円、理系40万円を支給(龍谷大学)といった手厚い支援もある。
学生の困窮が長期化することも予想されるため、「アルバイトができなくなった、家計が急変したなどの理由で経済的な困難を抱える学生に対して最大9万円(3万円×3カ月)を支給」(立命館大学)、「2万円の生活支援金を最大6か月給付」(札幌大学)のほか、学内業務でアルバイトを受け入れる大学もある(東北大学、追手門学院大学)。
オンライン授業の受講用にパソコンやタブレット、ルーターなどを貸与する大学も多いが、学生にとっては自分でプリントアウトすべき資料が増え、その費用がかさむという問題も起きている。そこで関西学院大学は、コンビニエンスストアのネットプリントサービスを無料で利用できるようにするユニークな支援策を講じた。
ほかにも、卒業生等からの寄付による特別奨学金制度の新設、寮費の免除・減額、食料品の提供といった取り組みも見られる。
文部科学省の調査によると、中退者の20.4%、休学者の15.5%が経済的理由を挙げている(2012年「学生の中途退学や休学等の状況について」)。コロナ禍で経済的な問題による中退・休学を防止するため、大学には継続的な支援策が求められる。
経済的な支援を必要としているのは在学生だけではない。ベネッセコーポレーションの調査によると、高校生の保護者のおよそ7割が教育費について不安を抱いている。
2021年度入試では、学費が高い大学を志望校からはずしたり併願校の数を絞り込んだりといった傾向が例年以上に顕著になることが予想される。そのため、大学の募集広報では入試や教育の情報に加え、受験料や入学金、授業料、生活費の減額や補助といった経済支援に関する情報が重要なアピールポイントになりそうだ。園田学園女子大学・短大は5月初旬、年内入試について「入学検定料3万円の無償化」を打ち出し、注目を集めた。
学び続けるための経済支援は在学生のみならず、高校生とその保護者向けにも策を講じたうえで積極的に広報することが大切だ。