乗り切ろう!コロナ危機⑥ 高校調査から考える大学の対応<上>
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2020.0521
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3行でわかるこの記事のポイント
●ベネッセが臨時休業中と休業明けの取り組みについて教員の声を集約
●69%の高校が休業中は授業を実施していない
●休業中の学力は「課題の取り組み状況で把握する」が過半数
ベネッセコーポレーションは、新型コロナウイルスの感染拡大によって臨時休業した高校の状況と休業明けの見通しを把握するため、教員を対象に調査を実施した。受験について不安を募らせる高校生、思うような指導ができず苦慮する教員の声を通して大学がすべきことを考えるため、調査結果を2回に分けて報告する。初回は学校の臨時休業中の課題や授業、学力把握の状況について取り上げる。
ベネッセが実施した調査の概要は以下の通り。4月下旬から約10日間のインターネット調査で543人の高校教員から回答を得た。
4月20日時点で95%の高校が臨時休業しており、そのほとんどにあたる96%が生徒に課題を出している。課題の内容を「既習事項の復習」と「3~4月に授業で学習する予定だった事項」に分けて聞いたところ、これら両方を出した高校が最も多く、全学年平均で61%だった。
臨時休業中に授業を実施していない高校が69%に上る。オンラインで実施している高校は全学年平均で19%あるが、学年が上がるにつれてその割合が下がり、1年生の26%に対し3年生は18%。授業を受けられず、課題のみで受験生としてのスタートを切った3年生は大きな不安と焦りを抱えているはずだ。
休業中の学力を把握できている高校は全体で6%のみで「今後把握する」が62%。「把握する予定はない」も各学年で20%以上あった。
具体的な把握方法としては、どの学年も「課題の取り組み状況やアウトプットの質の確認」が多く、平均で54%。「教員作成のテスト」「外部アセスメント」は合わせても各学年で20%を切る。これらテストの実施を困難視し、学力の把握は不可能と考える高校があるということだろう。
●生徒・保護者とのコミュニケーション~68%が1年生とも「とれている」
74%の高校は生徒・保護者とコミュニケーションが取れていると回答。学年が下がるにつれその割合は下がるものの、入学式の中止などで直接接触が難しい中にあっても68%の高校が1年生とコミュニケーションをとっている。その手段は電話、メール、Zoom等のオンラインツールの順となっている。
調査では、休業中のコミュニケーションで上がってきた生徒や保護者の声を答えてもらった。以下は3年生とその保護者の声。
*高校教員が回答した「3年生の声」
・「授業の進度に対する不安。一方で自学自習の習慣がついたという声も。みんなと一緒に学習したいという声も多い。特に3年生は、入試に間に合うのかという心配の声も多い」
・「課題で分からないところを質問できないのがつらいとのこと。普段なら友人に気兼ねなく話をしながら学習もやる気になれるのに、刺激がなく気持ちが乗らないとも」
・「まだ習っていない理科や地歴公民が不安である、受験に間に合うか心配、部活の大会はどうなるか等の声を聞いている」
・「英語等の検定試験は実施されるのか。大学のオープンキャンパスに行きたいが行けないので進路選択に困っている」
*高校教員が回答した「3年生の保護者の声」
・「学習の定着度合いが分からない。受験が心配。特別措置はあるのか、受験時期はどうなるのか等」。
今回紹介した調査結果から、多くの学校が授業ではなく課題を通じて予定していた学習進度の達成を図り、課題への取り組み状況で学力を把握する考えであることがわかる。休業中の学力を把握しないという高校もある。これは評定平均をはじめとする調査書の中身に一定の影響を及ぼすはずだ。大学はこうした特殊事情を理解したうえで、次年度の学生募集や入試を設計する必要がある。
長期化する自宅学習による閉塞感と意欲の低下、大学の情報を得られない焦燥感と受験に対するさまざまな不安。このような受験生の内面に向き合い、勇気づけるために大学からの働きかけが今ほど求められている時期はない。多くの大学は、在学生のために「今できること」として試行錯誤でオンライン授業に取り組んでいる。次のコロナ対応として、受験生に対しても「今できること、やるべきこと」を考えて動き出す必要がある。