2020.0127

海外向け研究ブランディング①「強みを持つ研究」×「国際的なニーズ」

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3行でわかるこの記事のポイント

●「世界大学ランキングで上位は2校のみ」の理由
●国内でのブランドがそのまま通用しない海外市場
●国際的なニーズで見直した場合、強みの研究は何か

国内では一定のブランド力をもっていても、海外での認知度があまり高くない日本の大学は多い。海外市場でのブランディングに精通した進研アドの担当者が、その課題と具体的な解決策について、3回に分けてレポートする。

*この記事のPDFはこちら

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つついえみ●関西地区での大学支援を経て2018年より現職。THE世界大学ランキング分析や大学の魅力向上施策の企画立案など、多角的に改革支援を行っている。
〈講演活動〉 全国の大学での学内セミナー、FD講演多数。テーマは「ランキングマネジメントとブランディング」「教育力の可視化」「高校教員向けブランディング」など。


●「世界大学ランキングで上位は2校のみ」をどう打開?

 現在、多くの日本の大学は、国内の高校生向けに自学の教育や研究の特長をあらゆるメディア、手段でもって発信し、大学のブランディングに努めています。一方で、同じくらいの熱量を持って海外向けの研究ブランディングに取り組んでいる大学は少ないのではないでしょうか。これは非常に"もったいない"状況だと感じています。
 例えば、大学の研究力を推察する一つの物差しである「THE世界大学ランキング」。このランキングにランクインできるのは、世界に約2万3000校あると言われる高等教育機関のうち、たったの上位5%です。最新の2020年度版でランクインした日本の大学は110校に上り、その数は世界第2位でした。しかし、200位以内にランクインしたのは、東京大学と京都大学のわずか2校です。
 世界大学ランキングにおける日本の課題は、「被引用論文」と「国際性」のスコアの低さと言われていますが、その背景には、「レピュテーション(評判)」の低さが関係しているのではないでしょうか。つまり、実力はあるのに、こと海外の研究者や高等教育機関には、各大学の研究が「知られていない」のです。たとえ国内ではブランドが確立していたとしても、それが自然と海外にも波及してブランドがつくられるということはまずありません。海外には海外向けのブランド戦略が必要なのです。
 しかしそもそもなぜ、海外向けに研究ブランディングに取り組む必要があるのでしょうか。ランキングのため? 違います。それは、大学の教育力、研究力発展の助けになるからです。研究ブランド力の向上は、海外の優秀な研究者や学生のリクルーティングや、海外大学との共同研究を促進します。加えて、国内外の企業との共同研究、研究資金獲得にもつながります。ランキングの順位はあくまでその結果としてついてくるもので、海外での大学の価値が上がることと相互作用があると考えるべきでしょう。

●英訳前にまず決めたい「海外向け」のアピールポイント  

 海外向けの研究ブランディングというと、とりあえず今ある研究情報を英訳してWebサイトなどで発信しようと急がれる方もいるかもしれません。しかし研究ブランディングをするうえでは、「何を」アピールするか戦略的に決めないままの取り組みは、届けたい海外の研究者や機関には届かず、砂漠に水をまくようなものです。よって、まずすべきは自学の研究者が取り組んでいる研究を棚卸しし、そのうえで世界的なニーズと照合して「海外向けにどの部分をアピールすると受け入れられやすいか」を戦略的に決めることです。中にはこのような説明をすると、「うちの大学が強みを持つ研究は、ドメスティックな分野が多いので、海外向けにアピールしにくい」という意見も聞かれます。本当にそうなのでしょうか? 
 例えば法学はドメスティックなものと考えられがちですが、グローバル・ビジネスに関する法律や、グローバル化社会における情報移転に関する問題など、国際的に注目度の高い分野も見出すことができます。
 このように「強みを持つ研究」×「国際的なニーズ」が重なる部分を自学のアピールポイントとして設定したうえで、次に大切なのが、それを研究者個人の取り組みを通してだけでなく、大学全体のものとして発信していくことです。残念ながら現状の海外向け研究広報活動は、国内の高校生向けのそれに比べて施策に計画性が乏しかったり、効果検証がなされていなかったりなど、課題が多いと伺います。この課題をどう解決していくかについては、本シリーズの第2回目で、「地上戦」(=Face to Faceの広報活動)と「空中戦」(メディアを使った広報活動)をどう組み合わせるか、という視点でリポートしてまいります。

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