大学間の学部譲渡を制度化、2020年度からの設置者変更も可能に
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2019.0527
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3行でわかるこの記事のポイント
●大学の再編・統合の加速を想定し、中教審の提言に対応
●校地や施設、教員組織をそのまま移行する場合は書類と審査を簡素化
●譲渡後すぐのカリキュラム改訂や改組など、スピーディな改革が可能
文部科学省はこのほど、大学を設置する法人間での学部譲渡の手続きを簡素化する制度改正を行い、施行した。5カ月間の審査を経て2020年度から譲渡先での学部運営ができるよう、相談・申請を受け付ける。
大学の設置者を他の法人に変える「大学の設置者変更」はこれまでも制度があったが、学部単位の設置者変更の制度はなかった。そのため、A大学の学部を他の法人が設置するB大学に移すには、A大学での募集停止による学部の廃止、B大学での学部新設という双方の手続きが必要だった。今後、大学の再編・統合が増えると予想される中、各私立大学の特色化や強みのある分野への資源集中を進めるため、学部単位の譲渡をより簡素な手続きで可能にすべきとの提言が、2018年11月の中教審グランドデザイン答申に盛り込まれていた。
今回の制度改正は、A大学からB大学に学部を移す場合、「学部の設置者変更」として扱うことを可能とするもの。その際、A大学の従来の施設を使用し、教員組織やカリキュラムもそのまま移行することを前提として申請書類や審査を簡素化するという規定を設けた。大学設置・学校法人審議会における教学面の審査は原則として省略し、「校地の整備」「標準設置経費」「負債率」「経常経費」の財源に関する基準は適用しない。譲り受けた組織や施設をB大学の設置法人が適切に運営する力があるかを審査する。
申請から認可までの期間は5カ月間で学部新設の場合と変わらないが、教員審査や法人の経費の見積もり・資金計画に関する書類など一部の書類を省略できるため、大学の事務的負担は大幅に軽減される。さらに、学部新設ではなく同じ学部として継続するため、カリキュラム改訂や改組などスピーディな改革が可能になる点も大学にとってメリットと言える。
法人を統合したうえでA大学からB大学に学部を移すことを想定した手続きは「同一法人内の既存の学部を基にした学部の新設」としてこれまでも制度があり、通常の学部新設に比べると手続きが一定程度、簡素化されていた。こちらも、先に述べた学部の設置者変更制度の新設と同様、「校地の整備」「標準設置経費」等に関する審査の省略によってさらに簡素化される。
大学間の学部の譲渡により、在学生は所属校が変わることになる。文科省は、この制度改正に関する学校法人への通知の中で「学生や保護者等に対し、十分に説明の機会を設け、理解を十分に得るよう努める」「学生が継続的に同様の学修ができるよう留意する」ことなどを求めた。
この制度改正の適用第一号になりそうなのが、神戸山手大学から関西国際大学への現代社会学部の譲渡だ。関西国際大学を設置する学校法人濱名学院が学部の設置者変更を申請し、2020年度から神戸山手キャンパスで現代社会学部を運営する方向で準備を進めている。同時に両法人が合併し、濱名学院が存続法人として「学校法人濱名山手学院」という名称に変わる。
濱名学院の濱名篤理事長は「この制度では学部設置者変更の翌年から届出改組で新学部を設置できるようになり、速やかな改組改編が可能になる点がメリットだ」と説明。一方で「教育条件の『同一性』と『質保証』という原則を求めているため審査に5カ月かかり、初年度の学生募集がしにくい。より柔軟で迅速な審査体制が望ましい」とも述べている。
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