文科省が専門職大学の新設申請に関するQ&A集入りガイドを公表
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2019.0117
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3行でわかるこの記事のポイント
●初年度の認可結果をふまえ、制度に対する理解浸透に注力
●説明会での質疑応答を基に「よくある質問」に回答
●「教授になれる実務家教員の要件に一律の基準はなく、個別に審査」
文部科学省は、専門職大学の設置をめざす大学や専門学校の質問に答える形で設置申請について解説するガイド的な資料をウェブサイトで公表した。従来の大学との違い、制度の要となる実務家教員や展開科目に関する説明のほか、設置基準や設置審査の考え方など、専門学校を念頭に置いた項目も。初年度の申請手続きで3校の認可にとどまったのを受け、制度に対する理解を促すことに力を入れている。
*文科省が公表した「専門職大学等の設置構想のポイント」はこちら
2019年度から制度がスタートする専門職大学については初年度、13大学3短大の新設が申請されたが、その後取り下げが相次ぎ、保留となった2件を含め2大学1短大の認可にとどまった。
大学設置・学校法人審議会の大学設置分科会長が「専門職大学等の制度趣旨を十分踏まえ、(中略)十分な準備を経た上で申請するよう強くお願いしたい」という異例のコメントを出す事態に。文科省も「各申請者が専門職大学の制度趣旨を十分理解し、十分な準備の上で申請を行えるよう、専門職大学制度の周知・徹底を」と求められた。
同省はこれを受け、2018年11月、2021年度以降の新設をめざす学校法人等を対象にあらためて説明会を開催。270機関(そのうち専門学校のみを運営する機関は約4割)から450人ほどが参加した。今回、公表した資料には説明会での質疑応答に基づくQ&A集を入れている。
Q&A集では、制度の要とも言える実務家教員の要件に触れている。「実務経験が何年以上あれば教授になれるか」との質問に対して、実務家教員は設置基準で「専攻分野におけるおおむね5年以上の実務経験」と「高度な実務の能力を有する者」と規定されているとしつつ、教授として認められる実務経験の年数等について一律の基準はないと回答。「養成する人材像や教育課程等を踏まえ、学問的・専門的観点から個別に審査される」と説明している。
実務家教員の「教授、准教授等ごとの実務の業績の基準はあるか」との質問に対しても、一律の基準はなく個別に審査されると回答。「業績が国際レベルであるとか国内レベルであるといった違いは一つの例として考えられるが、優れた業績と思われるものは取りあえず記載しておくほうがいい」といった趣旨の助言をしている。
専門学校を運営する学校法人が初めて大学設置をめざすケースも多いことから、「設置審査で設置基準以上のことが求められることがあるのはなぜか」という設置認可制度そのものに関する疑問にも対応。「設置基準は必要な最低基準であり、申請しようとする大学等の構想に応じて審査される」としている。専任教員も設置基準上の人数がいればいいということではなく、構想されている教育課程の運営に必要な人数の配置が求められることを説明している。
専門職大学と従来の資格系の大学との違いがわかりにくいとの指摘もよく聞かれる。そこで、Q&A集では医療福祉分野を例に「(専門職大学では)従来の医療福祉分野の職業に求められる能力に加えて、展開科目において関連する他分野について学ぶことにより、創造的な役割を果たすために必要な能力を育成する」と説明している。
11月の説明会で、文科省の担当者は「少子化で専門学校のままでは学生が集まらないから、教員はそのままで大学に替えようという発想では困る」とくぎを刺した。実践的な職業教育を掲げる専門職大学においては「どんな人材を養成するのか」を明確にすることが極めて重要であり、人材像をふまえてディプロマ・ポリシーを策定し、カリキュラム・ポリシーや教育課程を策定すべきだと強調。今回のQ&Aでもこのポイントに言及している。
担当者は、設置をめざす学校法人等からの最近の相談について「養成する人材像や教育課程の体系性を強く意識して検討する傾向が徐々に見えてきたが、そうではないケースもまだ多いので、引き続き個別相談等で説明していく必要がある」と話す。