2017.0612

新共通テストの案に私大連盟が「利用できない可能性も」との意見書

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3行でわかるこの記事のポイント

●記述式と英語4技能で示された段階別評価による選抜を困難視
●成績提供の後ろ倒しで、「歩留まり予測に基づく一般入試実施が難しくなる」
●当初の改革理念から遠ざかったと指摘

日本私立大学連盟はこのほど、文部科学省が5月に発表した「大学入学共通テスト(仮称)」の導入を柱とする入試改革の基本方針案について、私立大学が活用できなくなる可能性があるとして、再検討を求める意見書をまとめて同省に提出した。共通テストと各大学の一般選抜の日程等、入試改革の全体設計に関わる指摘もあり、文科省による6月中の方針決定にどこまで反映されるか注目される。

私大連盟のサイトの意見書掲載ページはこちら
http://www.shidairen.or.jp/blog/info_c/academics_c/2017/06/09/21039


●「難易度上昇によって識別性がなくなり、活用できない大学も」

 意見書では、共通テストの案について、記述式の導入や英語の4技能評価の実施など、大枠に異論はないとしつつ、個別の2次試験を行う国立大学と違って、私立大学にとっては困難な状況を生じさせる問題があると指摘。具体的には、以下のような点を挙げた。
 まず、記述式問題で3~5程度の段階別評価が想定されていることについて、私立大学は集団準拠型(集団の中から選抜するための相対評価)試験の一部として利用するため、選抜可能な差異が必要だとして「適度な得点の分散が確保されるよう」、作問の工夫を求めた。また、記述式の導入によって共通テストの難易度がセンター試験より上がるとし、多くの私立大学にとっては識別性が低くなり、有効活用できなくなるとの懸念を示した。
 英語の4技能については、多くの私立大学が現行のセンター利用方式同様、共通テストのアラカルト利用のみで合否判定するとの想定の下、問題点を指摘。英語のみが段階数の少ないCEFRの達成度評価で、他の科目はマークシート中心の集団準拠型試験という齟齬が生じるとして、英語4技能での「さらに細かな多段階評価」等を求めている。
 また、すべての高校3年生が外部検定試験を2回受験できるよう支援策の必要性にも言及。この課題については、先に開かれた共通テスト検討の有識者会議でも、バウチャーの配付などが提案されている。

●段階別評価と入学定員管理厳格化の矛盾を指摘する声も

 私大連盟は、文科省による高校、大学との調整が難航した入試日程案についても困難視している。案では、共通テストの成績提供を現行より1週間程度遅らせ、一般選抜は1月25日~3月25日に前倒しすることが示された。この日程だと多くの私立大学は、現在のように共通テストの成績を受け取って合格者の歩留まりを予測して一般入試を実施することができなくなると説明。定員管理や入試日程の設定が難しくなるため、共通テストを利用できない大学が出かねないとの懸念を示し、再考を求めた。
 共通テスト検討の有識者会議の委員には「共通テストと個別試験を組み合わせて合否判定することが前提」との考え方もある。意見書では、入試日程の再検討・調整がなされれば、私立大学でも共通テストを1次試験とし、一般選抜を2次試験とするような入試を行う可能性も出てくるとしている。
 私立大学からは、今回の入試日程案や「脱1点刻み」を掲げる段階別評価と、入学定員管理厳格化との矛盾を指摘する声も聞かれる。
 意見書は、今回の入試改革の理念を問いただす形で結ばれている。教育再生実行会議が提言した共通テストの年複数回実施、段階別評価等の一貫した理念が、この間の検討過程で「個別的問題のみが議論された結果、理念が分かりにくく、私立大学も対応のしにくい改革案になったことは否めない」と厳しく指摘。議論をさらに深めることで大学・高校の納得を得るべきだとしている。


*入試改革に関する記事はこちら

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