2017.0301

2017年度入試もネット出願が拡大、私大のほぼ半数に

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3行でわかるこの記事のポイント

●2017年度は56校増えて283校に
●私立大学志願者数大幅増の要因の一つに
●全学的な魅力発信と共感獲得で安易な併願によるミスマッチを防止

2017年度入試でインターネット出願を実施している私立大学は、前年度から56校増えて283校で、全私立大学の48.6%とほぼ半数に達したことが、豊島継男事務所の調査でわかった。私立大学の志願者数が対前年指数107.4(2月11日現在)という大幅増になった背景にも、インターネット出願による併願割引制度が影響している。
*志願者データは豊島継男事務所が2月11日現在、各大学の確定している選抜方式(一般・センター利用)についてまとめたもので、対前年指数は「前年度の同時期の志願者数」との比較。今後、後期入試等の志願者数の加算によって変動もあり得る。


●早稲田、慶應も完全ネット出願に

 豊島継男事務所は、進研アドと連携して大学入試の志願動向を調査・分析しており、2017年1月現在のネット出願導入状況について各大学のウェブサイトで調べた。

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 ネット出願は、2002年度導入の工学院大学、2007年度導入の中京大学などが先行し、志願者の規模が大きい都市部の大学を中心に近年、一気に拡大。志願者が多い大学にとっては手続き事務の効率化による費用対効果が大きいことに加え、複数の学部・学科、複数の入試方式への出願など、学内併願の簡易化と併願割引によって大幅な志願者増につながりやすい。
 2017年度入試で新たにネット出願を始めたり、完全ネット出願(紙の出願書類廃止)に踏み切ったりした主な大学を、志願動向と合わせ下表に示す。総合政策学部新設と重なり大幅増となった津田塾大学をはじめ、ほとんどの大学で志願者が増えている。

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 2017年度の例に限らず、ネット出願導入初年度は特に志願者が増える大学が多いが、学内併願による増加分がほとんどで、実志願者数はあまり増えていないというケースもあるようだ。

●学部・学科の学びの特色と合わせ大学全体の魅力も発信

 ネット出願は大学と受験生双方にとってメリットが大きいが、受験生が手軽さや割安感に流されて安易な併願に走らないよう、大学が受験生の進路意識を育て、適切な方向に導くという観点から運用することが大切だ。学部・学科の学びの中身をきちんと理解しないまま、本来の志望や興味・関心とは異なる学部や学科にまで出願し、そこに合格・入学してからミスマッチで中退に至ってしまうのは、大学にとっても受験生にとっても大きな損失になる。
 各学部・学科の学びの特色をきちんと伝えることはもちろん、大学全体の魅力を発信して共感してもらい、ポジティブな姿勢で複数の学部・学科に挑戦する受験生を育てることが、ネット出願時代の大学の課題と言える。志望者に対して大学独自の魅力をしっかり訴求し、確実な出願、そして入学へと導く施策が必要だ。
 こうした努力が、結果として実志願者数の増加、入学辞退者の低減にもつながるはずだ。