2017.0217

私立大学振興検討会議が経営困難校への踏み込んだ対応の提言へ

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3行でわかるこの記事のポイント

●経営破たんに陥る前の介入を可能にする方向
●法人が独立したままで連携する「ホールディングカンパニー形式」も例示
●理事、監事等の損害賠償責任の明確化も検討

文部科学省の有識者会議「私立大学等の振興に関する検討会議」の第12回会合が2月14日、都内で開かれた。3月に発表する会議報告には、経営破たんが避けられない学校法人については文科省をはじめ所轄庁の判断によって清算等の準備に入れるようにすべきとの提言を盛り込む見通しとなった。私立大学全体に対する信頼の確保や学生保護の観点に立った提言であり、大学はガバナンスの仕組みの実質化に加え、理事等にはそのポストにふさわしい見識と能力のある人材がついているか、今一度問い直す必要がありそうだ。
関連する議論を紹介した会議の内容はこちら。
/univ/2016/11/shidaishinko09.html
/univ/2016/09/shidaishinko07.html


 4月にスタートした「私立大学等の振興に関する検討会議」は、定期開催最後となる予定の次回3月の会合で、年度内に発表する報告案について検討する。12回目の会合ではその前段階として、これまでの議論のポイントを確認した。
 主要議題の一つに位置付けられてきた「経営困難な状況への対応」については、次のようなポイントが示された。
・18歳人口の大幅な減少期を迎え、経営力強化に取り組んでもなお、経営困難な状況に陥る学校法人が生じるのは避けられない
・経営が悪化した法人に対しては、破たんに陥る前に踏み込んだ支援・誘導、指導・助言が必要
・これら支援や指導の主体は、文科省に加え、私学事業団の活用も考えられる。
・経営破たんが避けられない場合、文科省の判断によって、学生の保護に配慮した清算等の準備に入れるようにすべき

 経営が破たんしてから民事再生手続き等の処理に入る現行制度の下では、学生の前納学費は債権としての優先順位が低く不利益をこうむるなど、社会的影響が大きいため、多少とも余力がある段階で経営改善指導等の介入をしたり、他法人との統合を働きかけたりといったことができるようにすべきとの考え方に基づいている。
 このような事態に陥らないよう、大学には、理事会や評議員会、監事などのガバナンス機能を実質化して改革を進め、経営力を強化するよう求める。これら要職を担う人材の責任と資質を重視し、善管注意義務(業務を委任された人の専門的能力上、通常、期待されるべき注意義務)や法人、第三者に対する損害賠償責任の明確化も提言する方向だ。厳しい国家財政の下、私学助成で税金を投入することに国民の理解を得られるよう、他の公益法人制度や企業の取り組みを参考に、運営の透明性を高めることがねらい。
 学校法人を統合せず独立性を保ったままの連携で規模のメリットを生かす「ホールディングカンパニー形式」や、事業譲渡による大学の存続など、建学の精神が継承される「多様な連携・統合の方策」も探る方向だ。
 これらの論点や提言のうち、私立学校法等の制度改正が必要なものについては大学設置・学校法人審議会等で引き続き検討がなされる。