2016.1107

法政大学がブランドコミュニケーションのためのサイトを新設

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3行でわかるこの記事のポイント

●大学公式サイトから独立させ、「法政らしさ=実践知」が表れた記事を再録
●実践的な研究や、卒業生の「大学での学びと現在」を紹介
●学内でのブランドの共有・浸透にも力を入れる

法政大学は10月中旬、ブランド形成のためのウェブサイト「HOSEI PHRONESIS」(法政フロネシス。http://phronesis.hosei.ac.jp/)を開設した。ブランディング活動の一環として2016年2月に制定した「法政大学憲章=自由を生き抜く実践知」を体現するさまざまな大学関係者とその取り組みについて学外に発信し、「法政らしさ」を可視化する。並行して学内でのブランドの浸透にも力を入れ、「法政らしさ」の実質化と学内外での共有を図る。


●速報性が高い公式サイトに記事を埋没させない

 「PHRONESIS」とはギリシャ語で「実践的な知」という意味。ウェブサイト「HOSEI PHRONESIS」は、高校生の保護者や高校教員、企業の採用担当者など、大人のステークホルダーがメーンターゲットだ。「教育」「研究」「グローバル」「キャリア・就職」「データで見る法政」「伝統」の6カテゴリーで構成されている。

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 「教育」のある記事では、農村での地域おこしに携わる卒業生が田中優子総長によるインタビューにこたえ、現代福祉学部在学中、授業を通して介護施設や農村などを訪れた豊富な体験が今の仕事に生かされていると語っている。「研究」では各教員が、社会の課題解決にどうつながるかという視点から自分の研究を紹介。大学としての取り組みや一人ひとりの活動が、「自由を生き抜く実践知」というブランド提供価値をいかに体現しているかというコンセプトで貫かれている。
 大学の公式ウェブサイトから独立させ、コンテンツは公式サイトや広報誌から再録。公式サイトや広報誌と合わせ、広報課が運営する。「公式サイトでは受験生や学生に何らかの行動を促すことを目的に、日々、速報性の高い情報がいくつも発信される。その中で『法政らしさ』が表れた記事を埋没させないよう掘り起こし、『HOSEI PHRONESIS』に集約してあらためて発信していく」。マスコミ学が専門で、学内のブランディング推進チームのリーダーを務める藤田真文社会学部教授はそう説明する。

●「法政らしさって何?」-総長選での問いかけが出発点

 法政大学のブランディングの発端は、2014年に就任した田中総長が総長選で掲げたマニュフェストの中の一項目「法政大学の潜勢力を掘り起こす」だった。田中氏は、例えば「MARCH」というくくりの中で、他大学とは違う法政らしさを一言で表す明確なイメージがないと指摘していた。「『バンカラ』というイメージは今の法政の実態にはそぐわない。では法政とは一体どんな大学なのか?という問いを全ての教職員、学生が突きつけられた」と藤田教授。
 田中総長は就任後すぐ、藤田教授を座長とするブランディング戦略会議を設置。総長、理事はじめ現場の教職員も加わって大学のブランディングに取り組んだ。学内、および卒業生を対象としたアンケートやヒアリング、付属校を加えた計7回のワークショップなどを通して「法政らしさとは?」という問いを深掘りした。そこで浮かび上がった「自由な学風」「進取の気象」という学内の共有価値を、社会に提供する価値(ブランド提供価値)として「法政大学憲章=自由を生き抜く実践知」と言い替え、発表。この言葉が法政大学の「現在」を映し、「未来」の方向性も規定するという。
 藤田教授は「多くの教員が地域や企業の現場に学生を連れ出す授業をしており、学生も、自分たちで企画して講師を招く課外教養講座や自主マスコミ講座など、主体的な活動が活発。社会との関わりを通して学生を成長させる土壌がある。それを『自由を生き抜く実践知』という言葉に結晶させた」と説明する。

●一人ひとりの思考と行動にブランドを反映させる

 憲章を対外的に浸透させるための活動として、教員の研究を高校生向けに動画で紹介するSNS企画を手掛け、大人向けのサイト「HOSEI PHRONESIS」もスタート。さらに、教員の横顔を紹介する広報誌の連載も、実践知を体現する研究や教育活動の紹介という切り口で「HOSEI PHRONESIS」というブランドを冠する企画に衣替えした。
 学内での浸透を図るインナーブランディングにも力を入れる。2016年度は、藤田教授の下、各部門の職員計15人ほどで構成するブランディング推進チームが具体的な方策を検討。入職2年、4年、8年、12年の各節目で実施する職員研修で憲章について理解を深め、それぞれの業務に反映するために何をすべきか考えてもらうことにした。
 次年度は、学内のシンポジウムを開いて憲章を体現する活動をしている教員や学生、卒業生を顕彰することも検討している。その結果を学外に発信する一方、教員は自分の教育のあり方、職員は学生との接し方を見直す機会にしたい考えだ。
 「憲章を作って終わりではないし、新たにロゴを作るなど表層的な部分だけを整えても意味がない。大学の構成員一人ひとりの思考と行動に憲章の理念が自然に映し出されるよう実質化していきたい」と藤田教授。「『法政らしさ』が対外的にも広く共有され、それに共感して本学を選んでくれた学生がイメージとのギャップを感じることなく大学に溶け込んでいける、そんな数年先を思い描いている」。