武蔵大学-人文学部と社会学部に選抜型のグローバルコースを新設
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2016.1004
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3行でわかるこの記事のポイント
●人文学部に英語の授業と海外留学のみで卒業できるグローバル・スタディーズコース
●社会学部に英語+データ分析力を磨くグローバル・データサイエンスコース
●いずれも1年次前期、2カ月間の海外研修で英語力を強化する
武蔵大学は2017年度、人文学部にグローバル・スタディーズコース(GSC)、社会学部にグローバル・データサイエンスコース(GDS)をそれぞれ新設し、選抜型の少数精鋭プログラムをスタートさせる。経済学部では「ロンドン大学と武蔵大学とのパラレル・ディグリー・プログラム(PDP)」を2015年度に開設しており、これで、学部ごとに個性を打ち出したグローバル志向の特設プログラムがそろう。全学をあげてのグローバル人材育成の中核として期待される新設2コースの概要を紹介する。
*経済学部のパラレル・ディグリー・プログラムについては、2016年10月中旬発行の『Between』 10-11月号で詳しく紹介する。
武蔵大学を擁する根津育英会武蔵学園は、創立100周年となる2022年度までの6年間の第三次中期計画で、「留学生の受け入れ、送り出しとも倍増」「外国語でも授業ができる教員を全体の3割に」などの数値目標を掲げている。「ゼミの武蔵」を標榜する少人数、双方向型の授業で育てる「自ら調べ自ら考える」力を土台に、世界のどんな場所でも活躍できるグローバル市民の育成にますます力を注いでいく。
この方針の下、2016年度は全学的なグローバル関連施策を担当するグローバル教育センターを設置。2017年度には社会学部も、留学をはじめとする在学中の海外体験を推奨すべくカリキュラム改訂を行う。グローバル教育センター長も務める光野正幸副学長は「人文、社会両学部の‟特設コース"新設も、中期計画の学部レベルにおける具体化の一環として位置づけている」と説明する。
クオーター制(4学期制)の下、1年次に2カ月間の海外研修を含む集中的な英語学習を課すのは両コース共通で、それ以降の語学教育や専門教育、海外体験などは、学部ごとの特性や専門分野に対する社会からの要請を反映した内容になっている。新コースの設置に伴い2017年度の入学定員は、人文学部が25人増の325人、社会学部は24人増の254人になる。
定員増分は、センター方式、一般方式の入試区分の枠の増員に充てる。人文学部については指定校制推薦入学の枠も増やす。これは、指定校制推薦による入学者がしばしば成績優秀者として表彰され、卒業生代表を務めることも珍しくない、との事実を高く評価しているためでもあり、人文学部では独自の新たな高大連携の形も模索している。
人文学部のグローバル・スタディーズコース(GSC)の「英語プログラム」は定員30名程度で、英語英米文化学科だけでなく、ヨーロッパ文化学科、日本・東アジア文化学科の学生も履修できる。国家や民族の枠を超えた現代社会の課題に対応できる文化理解と語学力を兼ね備えた人材の育成をめざす。卒業要件の7割以上の単位を英語による授業で修得するよう義務づけ、英語で行う武蔵大学の授業と海外留学による単位認定のみでの卒業も可能なカリキュラムと指導体制を整える。
1年次前期は英語力を徹底的に鍛えるため、第1クオーターで週4回の語学の授業、第2クオーターは全員参加の海外短期集中講座を開設。1年次後期以降の講義やゼミも英語で行う。
専門科目は、「グローバル・リレーションズ(国際関係)」「グローバル文学」「グローバル日本学」など、社会学の知見も加えつつ現代社会の課題に人文学の専門知を生かすための科目群を用意。コースの専門科目のほかに、学生個々の関心に合わせて所属学科の科目も柔軟に選択できる。
6カ月または1年間の留学を原則とし、3年次の海外留学を組み込んだ履修モデルを示している。
コース生の選抜は、①入試合格時点での確約、②入学後に選抜・決定という2パターンがある。①は、2017年度に始まる「全学部統一グローバル型」入試による人文学部合格者にコース履修の権利を与えるというもので、学部指定の英語外部検定試験で一定の基準をクリアしたうえで、大学が課す「選択」(世界史B、日本史B、政治・経済、数学から1科目選択)、「国語」のうち1科目の得点で合否を判定。②については、入試合格後にコース履修を希望する者の中から入試、および入学直後の英語のプレイスメントテストの成績、志望理由に関するエッセイなどで選抜する。
GSCには英語プログラムのほかに、ヨーロッパ文化学科の学生が対象の「ドイツ語プログラム」「フランス語プログラム」、日本・東アジア文化学科の学生が対象の「中国語プログラム」「韓国・朝鮮語プログラム」も、各定員5名ほどで開設。いずれも、留学を前提とした少人数特訓コースである。これらはほとんどの学生にとって初修言語となるため、入学後一定期間の学習を経てコース履修希望者を募る予定だ。
社会学部のグローバル・データサイエンスコース(GDS)は、定員24名を想定しているが、場合によってはそれ以上も受けいれる。「これからの時代の世界共通言語は英語とデータ」という考えの下、高い英語力、データをエビデンスとして他者を説得し、課題解決策を提示できる人材を育成する。
学生の選抜は、英語力を重視してGSCの入学後選抜とほぼ同様の方式を採用。1年次前期に外国語現地実習を必修とする集中的な英語トレーニングを行うことも共通している。
1年次後期からは、社会学原論的な内容を英語で講義する「Sociology」、社会調査とデータ利用の基礎を学ぶ「データサイエンス基礎」など、専門科目に入っていく。「他の文系学部には見られない本格的なデータサイエンス科目を置く点が特長」と光野副学長。
人文学部との特性の違いをふまえ、留学の推奨度はより緩やかだが、2、3年次の「GDS実践」では、一定期間のグローバル体験、現場体験を課す。協定留学やテンプル大学ジャパンキャンパスでの国内留学、国際ボランティアや国際インターンシップなどを対象に、単位認定する。これまで、社会学部のカリキュラムは3、4年次に必修科目があるなど、留学をしづらい仕組みになっていた。2017年度からのカリキュラムはこの点を改善し、意欲ある学生の留学を後押しする。特にGDSでは文系・理系の枠にとらわれないリベラルアーツ型の学びを推奨し、他学部の科目も多く履修できる柔軟なカリキュラムにする。
各学部のグローバル化をけん引する3つの特設プログラムの履修生はもちろん、一般学生も海外体験に積極的に挑戦できるよう、今後はグローバル教育センターが中心となって交換留学協定校などを開拓。第三次中期計画に掲げた数値目標の達成に向けて全学で取り組む。