2020.0624

乗り切ろう!コロナ危機⑪不安に寄り添うWEB広報―千葉商科大学

この記事をシェア

  • クリップボードにコピーしました

3行でわかるこの記事のポイント

●WEBによるオープンキャンパス、教員向け説明会を実施
●地域や分掌を超え、教員にアプローチ
●質問がしやすいため「本音ベースの情報ニーズ」が把握可能に

コロナ禍により、これまで対面集合形式で行っていた募集活動がWEB形式に切り替えられている。多くの大学が試行錯誤している中、先んじてWEBによる活動に取り組み、手応えを感じている大学が千葉商科大学だ。出水淳入学センター長に話を聞いた。


●高校の困りごと解消を「大学にできること」で支援

 「進路指導ができない、受けられない」「自分の学力レベルがわからない」「大学入試はどうなるのか、情報がない」。コロナ禍で長期にわたって休校を余儀なくされた高校、高校生の不安と混乱。日頃情報交換をしている高校からこのような状況を聞いた千葉商科大学の出水淳入学センター長は「困りごとのうち、大学の対応によってできることは支援したい」と考えた。
 そこで、3月中にWEBによるオープンキャンパスや高校向けの説明会を始め、4月下旬には受験生や高校が知りたいこととして把握できた分を集めた特設サイトを開いた。一連の活動のコンセプトは「不安に寄り添うコミュニケーション」。不安解消が目的なので、大学からの一方的な情報発信ではなく、受験生や高校教員の気持ちや疑問を受け止め、応える「コミュニケーション」重視の活動に徹している。

●WEBオープンキャンパスが業務の効率化にもつながる

 WEBオープンキャンパス(以下OC)は3月19日以降、6月までは月に2、3回実施している。コミュニケーションのため、大学からの各種説明は既製の動画の配信ではなくライブで行い、終了後はチャットで質問を受け付ける。職員の発案でWEB個別相談も設けたほか、受験生の疑問を集めるアンケートをサイト上で常時実施し、FAQやその後の活動に反映している。
 これらの実行の労力は「対面形式が100とするとWEBOCはわずか5」(出水氏)と、思わぬ業務の効率化にもつながった。従来の対面OCと比べても遜色のない人数の参加者を集めることができ、北海道や沖縄など遠隔地からの参加もあった。WEBOCについては、自学サイト以外ではベネッセの進学情報サイトで告知した程度だという。8月からは対面とWEBを組み合わせてOCを実施する予定だ。
 高校教員向けのWEB高校入試説明会は、対面の時より参加者が増加。青森など、これまであまり縁のなかった地域から前年度の約3倍の参加があった。職員室全体で視聴した高校もあり、進路指導担当者以外へのアプローチにつながったという。
 5月22日には、他大学に先駆けて学校推薦型選抜と総合型選抜の入試日程と出願資格の変更について発表した。

●ノウハウが蓄積され、職員が主体的にアイデア出し

 出水センター長によると、募集広報活動のWEB化によって得られたメリットは以下の3つ。
① 本音ベースの情報ニーズを把握できる
従来の対面でのOCや入試説明会に比べ、チャットのほうが気軽に質問しやすいのか、受験生や保護者、高校教員いずれからも多くの質問が寄せられた。質問を定量化できるのもWEBでのコミュニケーションならではで、それを次の施策に反映できる。
② WEBコミュニケーションのノウハウの蓄積
試行錯誤する中でノウハウを獲得し、職員から主体的にアイデアが出て期中からどんどん施策が改善されているという。
③ 従来の枠を超えた生徒や教員へのアプローチが可能
地域はもちろん、特に高校教員については前述のように、担任など、進路指導担当者以外へのリーチが可能になった。
 WEBOCについては多くの大学から「リアルでの実施に比べてコミュニケーションに壁のようなものがあり、うまくいかない」との声も聞かれる。これについて出水センター長は「オンラインならではの工夫は特にしていないが、相手ときちんとコミュニケーションすることは意識している。高校生の方が動画でのコミュニケーションに慣れているので、壁があると感じられているとしたら送り手側が壁を作っている可能性もある」と話す。
 「不安に寄り添うコミュニケーションの試みを通じて『学生に寄り添う大学』ブランド構築の可能性を感じている」と話す出水センター長。同大学では募集活動のみならず、遠隔授業についても1年生に対して、先輩学生がTeamsを使った学びの支援をするコミュニティづくりを進めている。