2020.0106

私学助成配分ルールの変更①一般補助 定員割れによる減額をさらに強化

この記事をシェア

  • クリップボードにコピーしました

3行でわかるこの記事のポイント

●収容定員未充足の減額率を最大6ポイント引き上げ
●「教育の質」にアウトカム指標を導入し、就職率を見る
●情報非公表による減額も厳格化

「教育の質」の指標や私立大学等改革総合支援事業を含む2019年度の私学助成配分ルールが固まり、文部科学省等は各大学から提出された調査票等に基づいて配分調整の作業を進めている。①定員割れによる減額が一般補助と特別補助の両方で強化される、②教学マネジメントの取り組みに関する「教育の質」の評価が一般補助、特別補助の両方に影響を及ぼすなど、「メリハリある配分」という方針の下、大学にとっては補助金獲得に向けて従来以上の努力が必要になりそうだ。配分ルール変更のポイントを3回に分けて解説する。初回は「教育の質」の指標を含む一般補助について取り上げる。

*「私学助成配分ルールの変更②特別補助 経営悪化×定員割れで不交付も」はこちら
*「私学助成配分ルールの変更③改革総合支援事業 IRをさらに重視」はこちら


●収容定員未充足による減額率は2年続けて厳格化

 学部ごとの収容定員未充足による一般補助減額率は2018年度に厳格化されており、2年続けての改訂は異例。減額の起点となる充足率89%の減額率は前年度の5%から11%に。2017年度と比べると9ポイントの引き上げになる。充足率54%以下で減額率が最大の50%となるのは変わらないが、そこまでの間を細かく刻み、充足率89~75%は6ポイント、74~61%は3ポイント、それぞれ減額率を引き上げた。

zogenritsu.png

●「教育の質」による増減幅を拡大し、メリハリ ある配分に

 一般補助の「教育の質」の指標(教育の質にかかる客観的指標)も見直された。
2018年度から導入された「教育の質」の指標は、従来の私立大学等改革総合支援事業から移した評価項目を自己評価させ 、総合点に応じて一般補助を傾斜配分する仕組み。
 2019年度は増減率と評価項目に変更が加わった。
 2018年度の増減率は-2%~+2%の5段階だったが、2019年度は-5%~+5%の11段階に。教育の質保証に積極的な 大学には補助金を手厚く配分し、そうでない大学は減らすという「メリハリ」が強化された。

kyoikunoshitsu.png
 評価項目の変更で特に注目されるのは、「情報公表」に大学教育のアウトカム指標として就職率を導入、その公表の有無に加え、就職率そのものも評価の対象になることだ。具体的には、「全学や学部単位の資格取得や国家試験の合格状況、語学資格試験実績、大学院進学率等」「学科単位の就職率」の両方を公表し、就職率が平均値以上の場合は+4点、公表しているが平均値未満の場合は+2点、非公表で平均値以上の場合は+1点、これら以外は0点となる。就職率の比較は学科ごとに行い、全学科の80%以上で平均値を超える必要がある。
 就職率の公表はここ数年、財務省が私学助成配分の要件に加えるべきだと主張してきたのに対し、文科省が慎重姿勢を示してきた。文科省の担当者は「大学教育のアウトカムを何らかの形で見ていく必要はあるが、誰もが納得する指標を設けるのは難しい。現時点では就職率も指標になり得ると考えているが、大学の声もふまえ、引き続きより適切な指標を検討したい」と話す。

●FD・SDは「標準的に求める要件」に

 「FD組織の設置と実施」「SDの取り組み状況」は新たに「教育の質」の評価項目に加わった。これらは、2018年度は「全大学に標準的に求める要件」とはみなされず、改革総合支援事業の方に残ったが、取り組みが広く浸透し、標準化すべきという判断に変わった。
 「情報公表の実施状況」には、①専任教員数や授業料等の「教育研究上の基礎的な情報」、②3つのポリシーやシラバス等の「修学上の情報」、③収支計算書や貸借対照表等の「財務情報」の3つがあり、③については2018年度、公表度に応じた減額率を最大50%に引き上げて厳格化。2019年度は①②の減額率も、従来の「-15%~0%」を「-50%~0%」に引き上げた。情報公表の強化を盛り込んだ改正私立学校法が2020年4月に施行されるのを受けた措置だ。