2019.1010

高等教育無償化の対象校が決定、11月から在学生の申請対応へ

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3行でわかるこの記事のポイント

●全大学・短大の97.1%が対象に決定
●在学生の申請手続きでは年度末に大学から支援機構に成績・意欲を報告
●支援を申請している入学予定者の納付金の扱いも検討課題に

2020年度からスタートする「高等教育の修学支援(高等教育無償化)制度」の対象となる大学がこのほど、文部科学省から発表された。大学・短大は全1074校の97.1%にあたる1043校が申請し、全てが要件を満たし支援対象となる。対象校は引き続き、在学生からの申請への対応、支援申請中の次年度入学予定者の納付金への対応などが必要になる。在学生への対応では、成績評価や意欲の確認など、無償化制度における教学面のルールを実際に運用していくことになる。


*支援対象の大学等の一覧はこちら
*文科省の特設サイトはこちら

●私立大学・短大の96.5%が申請し全てが対象に

 「高等教育の修学支援(高等教育無償化)制度」は給付型奨学金と授業料等減免のセットで、住民税非課税世帯、およびこれに準ずる世帯からの高等教育機関への進学を支援する。文科省は、合計費用を最大で7600億円と試算している(支援対象となる低所得者世帯の高等教育進学率が全世帯平均の約8割まで上昇したと仮定した場合)。
 文科省の発表によると大学・短大1043校を含む計2789校が機関要件を満たし、支援対象に決まった。国公立大学・短大、および高専は全てが対象。私立大学・短大は96.5%にあたる857校が申請し、全てが要件を満たした。専門学校は62.2%にあたる1689校が対象に決まった。
 文科省によると、今回の要件確認で大学等からの質問が特に多かったのは「実務経験のある教員」の解釈。文科省は「実務経験の期間は問わない」「専任教員に限定しない」など、柔軟に扱う方針を示していたが、確実に要件をクリアするため慎重に対応する大学が多かったようだ。実務経験のある教員が担当する授業の割合は年度ごとに変動することもあり得る。次年度以降も毎年5月~6月に必要となる申請手続きをスムーズにするため、要件については十分理解しておくほうがよさそうだ。

●在学生の支援可否は成績か学修状況・意欲で判断

 現在、支援を申請した高校生の家計要件確認・審査を日本学生支援機構(JASSO、以降「支援機構」)が行っていて、支援対象になる生徒には12月下旬、3段階ある支援区分のいずれに該当するかも含め、決定が通知される。

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 支援対象に決まった大学に次に求められることは、11月から始まる在学生の申請(11月1日から同30日まで受け付け)への対応だ。支援を希望する在学生は奨学金については大学を通して支援機構に申し込み、学費の減免については大学に申し込む。奨学金の対象に決まった学生は自動的に学費減免の対象にもなり、減免分が文科省等から大学に支払われる仕組みだ。要件を満たす学生には4月に機構から採用決定が通知され、2020年度から支援を受けられる。

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 申請した学生については以下の①、②いずれかの要件に該当することを大学が確認し、2020年3月末までに機構に報告する。今年度の成績や修得単位数が確定すると同時に報告するタイトなスケジュールになりそうだ。
①2019年度の学業成績(GPA等)が上位2分の1以上である。
または
②2019年度までの通算の修得単位数が「(卒業に必要な修得単位数/修業年限)×2019年度までの在籍年数」以上、かつ学修計画書の提出によって学修の意欲や目的、将来の人生設計が認められる。
 この手続きにおいて、機関要件確認時に示した成績評価や意欲確認の方法が各大学で実際に運用されることになる。
 文科省と支援機構は10月上旬から、在学生の申請手続きや授業料減免の考え方に関する説明会を全国で開き、学修計画書の書式案を示している。正式な書式は間もなく大学に示される。
 文科省は各大学に、支援を申請中の入学者については入学金と授業料等の支払いを猶予するよう依頼している。各大学は、AO入試合格者等、入学手続き段階で支援の可否が未決定のケースも含め、どのように対応するか決めておく必要がある。
 高校在学中に支援を申請しなかった場合も、2020年度の大学進学後に申請が可能だ。その手続きでも、大学が支援機構との窓口役を担うことになる。オープンキャンパスなどでの大学からの情報発信が制度に対する理解拡大につながりそうだ。
 文科省の担当者は「今回、申請を見送った大学等を含め次年度以降も多くの学校に申請していただき、受験生の選択肢を広げていきたい。大学等が学生の学びの支援に引き続き積極的に取り組むよう期待している」と話している。