一法人複数大学検討会議-構想中の大学は「複数大学の利点」の説明を

●構想中の大学に対し「メリットが十分伝わらない」との声が相次ぐ
●「複数大学での存続は認めるべきだが、その理由について主体的な説明が必要」
●個別の大学で問題が起きた場合も最終責任は法人が負うことを確認

「国立大学の一法人複数大学制度等に関する調査検討会議」(座長:有川節夫放送大学学園長理事長)の3回目の会合が10月24日に開かれた。前週、経営統合を検討している4組の大学から非公開で行ったヒアリングの結果をふまえて議論し、「経営のみ統合し、複数大学のまま運営するメリット」についてあらためて説明を求めることが決まった。

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●経営統合・再編によって複数大学を設置する構想も

 この日の会合ではまず、4組の大学からのヒアリング結果を文部科学省がまとめて説明した。
 小樽商科大学と帯広畜産大学と北見工業大学は2022年度に経営統合し、「国立大学法人北海道連合大学機構(仮称)」を設立する方向で検討。複数の役員を産業界から招へいし、3大学の分野融合型教育システムの開発など、社会のニーズに即して教育研究機能を強化することによって北海道の経済・産業の発展に貢献したい考えだ。

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 岐阜大学と名古屋大学は4組の中で最も早い2020年度の経営統合をめざしている。「国立大学法人東海国立大学機構(仮称)」を設立し、産業界や地域との連携の中核となる大学群「TOKAI PRACTISS」のプラットフォームを形成し、2024年度末までに活動を実質化するという計画だ。

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 静岡大学と浜松医科大学は2021年度に経営統合して設立する新国立大学法人の下に、静岡大学静岡キャンパスを中心とする大学(静岡市)と、静岡大学浜松キャンパスと浜松医科大学を中心とする大学(浜松市)を設置し、地域活性化と国際競争力強化の両面を促進したい考え。2023年度には地域の公私立大学の参画も得て文科大臣が認定する大学等連携推進法人(仮称)の設立もめざす。

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 奈良教育大学と奈良女子大学は2022年度に経営統合して「国立大学法人 奈良(仮称)」を設置する方向で検討。現行制度では文科大臣が国立大学の学長を任命しているが、両大学の構想では「理事長・学長ともに大臣任命」としている。工学系の共同教育課程の設置もめざすという。

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 いずれのケースも、経営統合によって一法人となるが、大学は統合せず現状通り別々に運営する、または再編したうえで複数大学を設置する方向で検討されている。

●「複数大学のままでは資源配分がうまくいくか懸念される構想も」

 委員の意見交換では「大学を統合せず、複数大学のまま運営する必要性について、どの機構からも明確な説明はなかった」「経営統合の具体的メリットの説明が弱い印象を受けた」との声が相次いだ。「構想の中には、教育・研究と経営の両方に通じ、よほど強い権限を与えられた理事長でないと資源配分がうまくいかないと懸念され、むしろ一大学にする方がいいと思えるものもある」との指摘あった。
 これに対し、「どの機構もまだ議論が深まっていないためと思われる」「将来的には地域の他の国立大学との統合も視野に入れつつ、今回は最初のプロセスという考えだろう」「大学間の物理的距離の問題や個別大学のブランド力を維持したい意向もあるのでは」など、理解を示す声も聞かれた。
 その一方で、「企業合併におけるホールディングス方式のように、経営統合のメリットと各大学のブランド力維持を両立させる制度は大いにあり得るが、大学自身がその意義を主体的に説明できないままでは、仕組みが複雑化するだけということになりかねない」「一法人複数大学の制度設計をするうえで、制度を必要とする大学の考え方をしっかり聞くことは必要だ」という見解で一致。4組の大学に「(大学統合ではなく)一法人複数大学にするメリット」「経営統合による効率化・経営強化等の具体的内容」についてあらためて説明を求めることになった。

●「経営統合を認める要件を設けるか」も論点に

 こうしたやりとりの中、「この4組を含め今後、経営統合を希望する国立大学が出てきた場合、要件を設けず基本的にはすべて認めることになるのか」が論点になった。これについて、複数の委員から「過去の国立大学の統合とは異なり、何らかの要件が必要だ」との意見が出た。中央教育審議会大学分科会将来構想部会の座長を務める筑波大学の永田恭介学長は、近くまとめる答申を念頭に「今回作る法律には、今後のあるべき高等教育というグランドデザインの精神を込めるべきで、これまでの設置申請等の考え方とは違ってしかるべき」と述べた。 
 これに対し、文科省は「(経営統合や複数大学としての存続を求める大学には)中期計画・中期目標でその考え方を書いてもらい、評価委員会など、有識者も加えた透明性のある形で評価する仕組みが必要だろう」と説明した。
 会合では「経営統合という新しい制度を活用する一方、大学ごとの独立性・裁量も認めてほしい」という現場の要望を制度設計に反映することにはおおむね理解が示された。その一方で「一法人複数大学のメリットを大学自身が主体的に語る必要がある」「個別の大学で起きた問題も最終的な責任は法人が負うことを明確にする必要がある」「教学に対する理解が不十分な理事長に権限が集中しすぎないよう、学長の裁量を明確に規定することが重要だ。そのためにも、法人の長だけでなく学長まで文科大臣が任命することには慎重であるべき」との考え方で一致した。