「地方大学振興」有識者会議で私大団体連合会が新増設規制に懸念を表明

●「都会での規制ではなく地方での支援を」
●地方大学について定員未充足による補助金不交付基準撤廃を要望
●意見交換で「地元に志望学部ができても都会での進学を希望」との指摘

東京での大学・学部の新増設抑制をテーマの一つとする「地方大学の振興及び若者雇用等に関する有識者会議」の2回目(2月16日)と3回目(3月2日)の会合が都内で開かれた。日本私立大学団体連合会は、新増設の規制は私立大学の自主性を阻害するとの懸念を表明、地方創生の課題は地方大学の活性化によって実現を図るべきとの考えを示した。私立大学等経常費補助金の配分における地方大学への配慮について複数の団体から要望が出され、今後、何らかの形で制度が見直されるか注目される。

初回会合の記事はこちら
http://between.shinken-ad.co.jp/univ/2017/02/chihososei.html
事務局の資料はこちら
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/sousei/meeting/daigaku_yuushikishakaigi/h29-02-16.html
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/sousei/meeting/daigaku_yuushikishakaigi/h29-03-02.html


●「地元の人口構成や所得への貢献度で補助金の傾斜配分を」

 日本私立大学団体連合会の見解は、代表として桜美林大学の佐藤東洋士理事長・総長と松本大学の住吉廣行学長が出席した2回目の会合で示された。同連合会は日本私立大学連盟と日本私立大学協会の2団体で構成。私大協会の加盟校に多い地方の小規模大学の間では都市部の大学の規模拡大に危機感が高まっているが、連合会としては「都市での規制ではなく地方での支援を」との主張を打ち出した。 
 同連合会は、新増設の抑制が私立大学の自主性に基づく多様性を阻害し、進学希望者から進学場所を選ぶ権利を奪いかねないと主張。さらに、大都市圏への若者の集中は進学時のみではなく、新増設を規制しても地方創生の目的を実現できるとは限らないと指摘した。 
 地方大学の活性化策として、都市部の大学も加えた大学間連携による学生や教員の相互交流および教育プログラム開発、大学と自治体・産業界で構成する地域プラットフォームを活用した地域課題解決型教育・研究の拡充などを挙げた。 
 また、地方大学の支援につながる制度の見直しとして、「私立大学等経常費補助金の一般補助に、地域の人口や年齢構成、市民・県民所得等から算出した『社会貢献係数』を導入する」「現行の私学助成配分基準における『収容定員未充足の場合の経常費補助金の減額、特に不交付となる基準(充足率50%以下)を撤廃する』等を求めた。
  一方、全国市長会は「地方から東京への人口流出に歯止めをかけるため、大学の東京一極集中の是正に取り組んでほしい」と要望。地方大学については私立大学等経常費補助金の配分における入学定員充足率の基準を緩和することも求めた。地元内外から学生を集めて地域活性化に貢献している大学を念頭に、中規模であっても小規模の基準を適用して定員超過の規制を緩和してほしいとの要望だ。

●私大の公立化を疑問視する声も

 意見交換では、高校生対象のアンケートから「志望する学部が地元の大学にできたとしても進学を検討すらしない理由は、都会で自分の可能性を広げたいからという答えが一番多かった」という結果が紹介され、受験生の学問ニーズへの対応によって必ずしも地元につなぎ止められるわけではないという難しい現実が示された。
 一方、会議のテーマの一つである東京の大学の地方移転については、「その地域にニーズがあり、かつ既存の大学との競合が起きない分野でないと、むしろ地方が疲弊してしまう」との指摘がなされた。
 近年増えている地方私立大学の公立化も話題に上り、「地方交付税が注ぎ込まれることになり、安易にやるべきではない」といった意見が出た。
 有識者会議では、2回に分けて行った大学や自治体、産業界、保護者等の各団体からのヒアリングをふまえて論点整理に移り、5月中旬に中間報告をまとめる予定だ。その中では、新増設抑制の是非に加え、よりハードルが低く地方からの要望が強い私学助成制度における地方大学優遇策の行方も焦点の一つとなりそうだ。