文科省「私立大学振興検討会議」で私学事業団の権限強化論が相次ぐ

●事業団の経営相談、指導は要望する大学のみが対象
●「私学の自主性とは私学全体の信頼性を自ら守ることでもある」
●法改正、事業団の人員強化に期待する声も

文部科学省の有識者会議「私立大学等の振興に関する検討会議」の第9回が11月10日、都内で開かれた。法律の規定上、経営危機に陥った大学に対して積極的な介入ができない日本私立学校振興・共済事業団(私学事業団)の位置付けに対し、委員が次々と疑問を投げかけた。これまでの会議でもたびたび指摘されていた論点が一気に噴出した格好で、事業団により強い権限を持たせて各大学の経営の安定化を図り、私立大学全体に対する信頼を高めるべきとの意見が相次いだ。
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●経営相談、トップや若手職員対象のセミナー等を実施

 この日の会議では私学事業団の幹部が、私立大学の経営支援に関する事業団の取り組みについて説明した。経営改善計画作成支援を含む経営相談、理事長、学長等を対象とする「私学リーダーズセミナー」、若手職員を対象とする「私学スタッフセミナー」などを紹介。経営相談の件数は2013年度から2016年度(予定)まで81、62、69、76と推移し、「近年は増加傾向にある」と説明した。
 ただし、日本私立学校振興・共済事業団法では「私立学校の教育条件及び経営に関し、情報の収集、調査及び研究を行い、並びに関係者の依頼に応じてその成果の提供その他の指導を行うこと」と定められ、事業団はあくまでも大学側の要望を受けて経営に関する指導をすることになっている。

●「せっかくのデータを活用できていない」との指摘も

 委員からは、この制約を取り払い、経営に問題がある大学に対しては私学事業団が積極的に介入し、場合によってはトップの交替などを主導すべきとの意見が相次いだ。主な意見は次の通り。

・(中長期計画を策定していない大学法人が15.9%、短大法人が22.7%あるとの報告に対し)企業では考えられない。このような大学にまで税金を投入し、支援する必要性について国民の合意が得られなくなる。大学の経営悪化によって学生が被害にあわないよう、文科省と事業団が明確な役割を果たすべきだ。
・私学の自主性とは、個々の大学の自主性のみならず、問題のある大学は私学団体等がこれを排除するなど、適切な対応によって私学全体の信頼性を自ら保証するものだとの期待が社会にはある。しかし現状、私学団体はそういう対応をしていない。それをふまえて私学事業団の役割を問い直すべきではないか。
・私学事業団は非常に良い調査データを持っていながら、有効活用できていない。個々の大学の匿名性を担保しながら大学間の比較・分析をし、より踏み込んだ経営改善の支援をすべきだ。
・現在の制度の枠内でもやれることがあるはず。私学事業団の人員を増やして相談業務を強化することも考えてほしい。
・私学事業団がより積極的に指導するためには法改正が必要。経営計画を立てる猶予もなく、すぐにトップを交替させるべきケースもあり、その指示は文科省ではなく中間団体である事業団が下してこそ大学の理解が得られる。次の時代に向けた事業団の役割を検討すべき時期に来ている。

 これらの意見に対し、検討会議委員でもある私学事業団の河田悌一理事長は、「現行法の制約の下でも、大学に対して言うべきことは言い、啓発に努めている。文科省が人員の増強を認め、事業団が強い権限を持つことを私学団体が許容するなら、各委員が期待されていることも可能かもしれない」と応じた。
 この日の会議では、「大学のガバナンスに関するワーキンググループ」の委員についても報告された。私学高等教育研究所の西井泰彦主幹をワーキンググループの主査とし、公認会計士の佐野慶子氏、明治大学の清水潔特任教授、学校法人青山学院の竹石爾顧問・前常任監事・元常務理事、東京大学大学院教育学研究科の両角亜希子准教授、検討会議座長を務める金沢工業大学の黒田壽二学園長・総長の6人が私立大学のガバナンスのあり方について話し合い、年明けをめどに報告をまとめる。
 次回の会議は12月7日(水)10時から文科省で開かれる予定。