大学の定員超過抑制のため、私学助成不交付基準を厳格化

2018年度には大規模大学が1.1倍、中規模大学は1.2倍へ改定

文科省は2016年度から、入学定員超過による私立大学等経常費補助金の不交付の基準を厳しくする。さらに、2017年度以降の学部等の新設を認可しない基準となる入学定員超過率も厳しくする。地方創生の観点から、都市部の大規模大学への学生の集中を抑制する施策として検討されてきたが、都市と地方という「地域を区別する規制」の難しさに直面。「教育の質の改善」というもう一つのねらいを打ち出すことによって、全国一律の規制として着地させた。

1.私学助成不交付の基準

 現在、収容定員8000人以上の大規模大学は入学定員充足率が1.2倍以上、それ以外の大学は1.3倍以上で私学助成が全額不交付となる。2016年度からは、新たに「収容定員4000人以上8000人未満」の「中規模大学」を加えた3区分にする。現状は、入学定員800~1000人のゾーンが定員の充足と未充足のおおよその境目となっているため、充足している中規模大学も定員を大きく逸脱しないよう規制を厳しくする。

 3年間で徐々に不交付基準を厳しくし、2018年度には大規模大学が1.1倍、中規模大学は1.2倍に。小規模大学は1.3倍のままとする。

 入学者数を定員通りにする調整は難しいが、2019年度以降、0.95倍でも1.0倍と同額になるよう私学助成を上乗せする措置の導入など、095~1.0倍にする努力へのインセンティブを設ける。

私大の定員抑制1.png

 地方創生の観点から3大都市圏(埼玉、千葉、東京、神奈川、愛知、京都、大阪、兵庫の8都府県)を対象に厳格化することも検討されたが、ST比改善による教育の質向上も重視し、全国一律に適用することになった。

2. 学部新設不認可の基準

 大学が学部等の新設や、既存学部等の定員増を申請する場合、現在は大学の規模にかかわらず、既存学部ごとに過去4年間(就業年限)の入学定員充足率の平均が1.3倍以上だと認可されない。その法人が設置する全ての大学、短大、高専、それぞれの充足率が審査される。

 2017年度新設分からは、大学の規模と既存学部の規模によってこの基準が変わり、全体として厳格化。規模の異なる学部がある場合、それらすべてで基準以下に抑える必要がある。3年の移行期間を経て2019年度には、大・中規模の大学の大規模学部(入学定員300人以上)は1.05倍以上、中規模学部(同100人~300人未満)が1.10倍以上、小規模学部(同100人未満)は1.15倍以上で新設が認められなくなる。

 大規模大学が2015年度まで、既存の大規模学部の充足率を私学助成が交付される1.19倍で調整してきた場合、2018年度に学部を新設するには、4年間の平均を1.15倍未満にするため、2016年度以降は1.10倍程度に抑えなければならなくなる。

私大の定員抑制2.png

3.「都市集中」抑制の効果は?

 これらの施策の検討の出発点には、全私立大学における2014年度の入学定員超過約4万5000人のうち、8割にあたる3万6000人が3大都市圏に集中し、中規模以上の大学では9割がこれら都市圏に集中しているという実態がある。しかし、地方から都市部への進学者流出の抑制をねらいとする今回の措置には、大学関係者から効果を疑問視する声も聞かれる。

 ある地方大学の幹部は「大規模大学の間では、移行期間のうちに学部を新設して定員を増やしておこうという動きが出るだろう。結果として、地方からの流出がさらに進むのではないか」と懸念する。こうした考えの下、充足率の規制だけではなく、都市部の大規模大学がこれ以上定員を増やせないよう規制すべきとの指摘も出ている。実際、文科省も、特定の地域で定員増を認めないようにする措置を検討した。しかし、工場等制限法の復活ともいえる規制は難しいと判断したようだ。

 進研アド改革支援部の加藤雄次主席研究員は、「定員超過に関する量的規制だけでなく、都市部の大学が集客力のある学部を新設することも規制しなければ、地方からの流出を根本的に食い止めることはできない」と指摘する。「しかし、これも、法的根拠なく大学の経営の自律性に縛りをかけることになり、現実味に乏しい。結局、今の時代において政治的、行政的に大学進学者の動きを変えることは難しく、それぞれの大学が自らの魅力を高めるしかないのではないか」。

*進研アドは、大学の新設・改組をご支援いたします。詳しくはこちら。
http://shinken-ad.co.jp/service/solutions/marketing04.html