2021.0623

ベネッセ入試結果調査②私大合格者数は4年間で最多となり総じて易化

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3行でわかるこの記事のポイント

●MARCHの合格者数は前年度から1万人以上増加
●志願者減×合格者増で実質倍率は入定厳格化前の水準に
●国公立の難関大、ブロック大でも既卒生が減少し現役生中心の入試に

ベネッセコーポレーションは全国の大学と高校の協力の下、2021年度入試の結果をまとめた。そのデータに基づいて入試を振り返る3回シリーズ、前回は国公立大学、私立大学ともに志願者数が減少したことを確認し、私立大学で合格者数が増えたことに触れた。今回は合格者数のより詳しいデータを加え、入試環境の変化を見ていく。

*各データは、特にことわりがない限りベネッセの調査によるもので、大学の公表数値を基にしたデータは5月中旬までに収集・確認できた情報を反映している。
*各データはベネッセの分類・集計によるもので、各大学が公表している数値とは異なる場合がある。

ベネッセ入試結果調査①18歳人口と既卒生の減少で競争緩和に向かう
ベネッセ入試結果調査③総合型選抜の志願者数は国公立、私立とも増加


●次年度も既卒生の少ない入試になる見込み

 18歳人口減少は難関国立大学や国公立ブロック大学の志願者数に大きな影響を与えなかったが、これらの大学にも既卒生の減少による影響はあらわれた。合格者数や入学者数を公表している国公立大学の情報から、一般選抜における合格者数、または入学者数に占める現役生の割合を下表にまとめた。難関国立大学、ブロック大学でも現役生の割合は前年より高く、現役生中心の入試となった。 今回、現役生の合格者が増えたことによって、次年度も既卒生の少ない入試になると予想される。

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●3年連続で志願者減の大学群も

 次に私立大学について、合格者数のデータを交えて入試環境の変化を見ていく。
 私立大学全体の一般選抜における志願者数は対前年指数88で、前年度まで増加が続いていた理系でも減少に転じた。
 「早慶上理」「MARCH」など、大学群ごとにまとめた4年間の志願者数推移を示す下のグラフから、2021年度はすべての大学群で志願者数が減少したことがわかる。減少傾向が続いている大学群もある。

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 一方、これらの大学群の合格者数推移を見ると、2021年度はすべての大学群において過去4年間で最多の合格者を出したことがわかる。MARCHの合格者は前年度から1万人以上増えている。新型コロナウィルスの感染拡大で受験生の動きが読みにくい中、各大学が確実な定員確保を図ったと考えられる。

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 私立大学における合格者数増加の背景には、繰り上げ合格者数増加という要因もありそうだ。下表からわかるように、2021年度の一般選抜の全合格者数に占める繰り上げ合格者数の割合は、多くの大学で前年度より高くなっている。上智大学の44%をはじめ立教大学、成蹊大学などで特に高い。
 新入試の導入で歩留まりを慎重に見ながら合格者を出したところ、上位校に合格して入学を辞退する受験生が想定以上に多く、繰り上げ合格を出したというケースも多かったと考えられる。 

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●競争緩和によって各偏差値帯で合格率が上昇

 この数年間、私立大学ではいくつかの要因が関わり合って志願者数や合格者数が大きく変動し、実質倍率はおおむね上昇してきた。下表は2015年度以降の一般選抜における実質倍率の推移を示している。
 2016年度からの入学定員管理厳格化によって入試が難化し、受験生の間では文系を中心に併願を増やす動きが広がった。その結果、実質倍率は2018年度、2019年度をピークに上昇。大学による合格者絞り込みが一段落した2019年度、2020年度も新入試制度導入を控えた安全志向によって実質倍率は高い状態が続いた。
 そして2021年度、志願者数が減少した一方で合格者数が増加したことによって実質倍率は低下、一気に入定厳格化前の水準に戻った。

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 競争緩和による難易度の変化を進研模試のデータで分析すると、受験生の各偏差値帯で合格率が上昇し、難関私立大学・大規模私立大学でも合格者平均偏差値が低下するなど、易化したことが判明。偏差値50前後の層を中心に、不合格者は大幅に減少していた。