2017.1214

ここが知りたい!新入試~文科省に聞く③ 4技能評価・変更点予告時期

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3行でわかるこの記事のポイント

●個別試験の英語で4技能を評価するかどうかは大学ごとに判断を
●入試変更点の予告は2018年9月~10月を目標に
●「成績提供時期が1週間程度遅れる」は維持の見通し

新入試制度をめぐって大学から挙がっている疑問点について、文部科学省の見解を交えて解説するシリーズの最終回は、個別入試の英語の試験や入試の変更点に関する公表時期等について取り上げる。

*「ここが知りたい!新入試 ①」はこちら
*「ここが知りたい!新入試 ②」はこちら
*2017年7月に発表された「大学入学共通テスト実施方針」、および平成33年度大学入学者選抜実施要項の見直しに係る予告」はこちら


● 共通テストを利用しない大学にも検定試験の成績提供を可能にすることを検討

4.個別試験の英語でも4技能評価が必須なのか?
 一般選抜で大学入学共通テストを利用しない場合、独自に作成する英語の試験は4技能を評価するものでなくてはいけないのだろうか。「各大学の個別試験や資格・検定試験等を通じて英語の4技能を評価していただきたいが、独自に作成する英語の試験において4技能を評価するかどうかは各大学の判断に委ねられる」というのが文科省の見解だ。
 4技能を見たいという場合、多くの大学にとって自前で試験を作成・実施するのは困難だろう。そこで、入試センターが運営して英語外部資格・検定試験の実施団体が参加する「大学入試英語成績提供システム」が、大学入学共通テストを利用しない大学に成績を提供できるようにすることも検討中だという。「なるべく早い時期から成績を提供することによって総合型選抜と学校推薦型選抜でも利用できることを期待している」と文科省。「現在のセンター試験では、発音記号を使った出題で話す力を見たり、語順に関する出題で書く力を見たりと、間接的に4技能を評価している面もある。今後はこれらの技能は資格・検定試験で直接評価していただくことが可能になる」。
 資格・検定試験については、大学から「目的や中身が異なる複数の試験を同じ尺度にあてはめて入試に活用することが本当に可能なのか」「学習指導要領準拠という要件にあてはまる試験は限られている」という声が依然、聞かれる。文科省は「あくまで現時点での考え」とことわった上で、「英語に関して学習指導要領では大綱的に定めている。実際には問題を見て確認することとなるが、主な資格・検定試験の中にそれに反しているものは思い浮かばない。また、学習指導要領で求められる4技能を評価している資格・検定試験が多く、だからこそ多くの大学がすでに入試で活用しているのでは」と説明。参加要件を振るい落とすためのものとは捉えず、多くの資格・検定試験が成績提供システムに参加することへの期待をあらためて示した。 

●国立大学は2018年度半ばまでの予告となりそう

5.2021年度入試からの変更点に関する情報はいつまでに公表すべきか
 「履修科目の選択など、高校での対応にある程度時間を要する変更点については対象となる生徒が入学して間もない2018年度の早い段階に公表するのが望ましい。各大学の実施要項の発表と合わせるなど、早目に公表していただきたい」というのが文科省の基本的な考えだ。しかし、私立大学では実施要項を制作しないケースが多く、入試改革の検討の熟度を考えると大学案内での発表も難しいはずだ。従って「入試の大きな変更点に関する発表は2年前までに行う」という原則の下で考えることになる。
 国立大学協会の幹部は11月下旬のあるシンポジウムで「2年前ルールなら2018年度末でいいという解釈もできそうだが、これだけ大きな変更である以上、年度初頭、または年度の半ばには予告すべきだろう」との見解を示した。この発言をふまえると、国立大学は10月頃までに変更点を発表することになりそうだ。
 私立大学の間でも「入試の2年前」とはAO入試が活発化し、推薦入試が動き出す9月~10月頃と捉えることが多い。従って、入試科目の変更点や新制度の下での英語外部資格・検定試験の利用、記述式問題の出題、調査書の活用法等の変更点については、2018年の9月~10月頃の発表を目標にするのがいいだろう。そこが国立大学の情報が出そろう時期になりそうなため、高校が私立大学に「いつ頃発表するか」と問い合わせてくることも念頭に置いた準備が必要だ。
 文科省は「年度をまたぐと『2年前』を過ぎることになり、問題があるのではないか」とも言っており、遅くとも2018年度末までには発表する必要がある。
 決定事項はウェブサイトを使って速やかに発表する、「外部資格・検定試験は利用しない」等、変更しないことも内容によっては早めに伝える、一部しか発表できない場合でも「●月頃に追加の情報を発表する」と予告するなど、受験生の立場に立った対応を心がけたい。入試の配点や日程・会場などは従来の入試情報の発表時期と同じで問題ないだろう。

●「高校からどう見られるか」という視点での判断・対応を

6. 大学入学共通テストの成績提供時期は?
 大学にとって特に気になる点の一つだが、文科省は「現行より1週間程度遅くなる方向」という見通しを変えていない。私立大学の中には、一般選抜のスケジュールに食い込むことになるとして「共通テストを使えない」「使わない前提でのシミュレーションを進めている」という声もあるが、文科省は「記述式問題の導入によって従来と同じ時期の成績提供は難しいが、積極的に使ってほしい。各大学の入試スケジュールに影響が出てしまうのは申し訳ない」としている。
 共通テストの成績提供の遅れは、国立大学にとっても頭が痛い問題で、共通テストを課す総合型選抜で面接の期間が短くなることへの対応などが検討されている。  

 今回の取材を通じ、文科省は「本来、入試のルールは文科省が決めるものではなく、高校教育への配慮の下で大学が主体的に判断・対応すべき」と繰り返し述べた。自学の入試が高校からどう評価されるのか、高校生がどんな印象を持つかということが大学にとって重要なはずで、高校生の立場に立った判断、高校や社会に対して自信を持って説明できる対応が第一と言えそうだ。


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