京都産業大学が重点エリアごとの高校教員向けデータブックを制作

●非出願者等に対する調査から課題を明確にし、ターゲットを設定
●エリアごとの出願傾向を競合との比較も交えて分析し、作り分け
●高校訪問では各地元の高校別出身学生数に関心が集まる

大学の募集広報において、限られた予算で効果を最大化するためには、課題を明確にし、その解決につながる具体的な戦略を考える必要がある。京都産業大学では 、「高校教員から生徒に自学を勧めてもらうための情報を届ける」という課題の下、重視するエリアごとの課題解決を図る3種類のデータブックを作った。制作の背景とその中身を紹介する。

*大学のプレスリリースはこちら
https://www.kyoto-su.ac.jp/news/20170612_345_release_ka01.html


●「高校教員に京産大を勧められた」と答えた者の割合が低下

 高校教員向けの「進路指導用京都産業大学データブック」は北陸版、中国版、四国版の3種類あり、いずれも表紙を除き全7ページ。1ページ目の冒頭は共通で、「ダイバーシティの街・京都で学ぶ」と国際観光都市・京都の魅力をアピールしている。奨学金制度や学生寮など、地方出身学生の支援策の紹介も共通だ。そして、エリアごとに県別、および主な高校別の出身学生数、主なUターン就職先とUターン就職した卒業生の声、さらに各エリアから自学に進学した現役学生の声などを入れて作り分けた。

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 データブックは6月はじめに完成し、高校訪問で好評を得ているという。
 高校教員向けの冊子の制作は、受験動向調査の結果を分析したうえで決定した。この調査は、資料請求等の接触をしたにもかかわらず出願に至らなかった者や入学辞退者を対象に、3年に1回実施しているものだ。
 2016年度入試の調査結果からは、京都産業大学の名前を受験情報誌で見たとの回答割合が高い一方、高校の先生から勧められたという割合は下がっていた。この傾向は特に地方で顕著だったという。一方で、辞退者のうち関西の競合校に進学した者の中では、先生にその大学を勧められたという割合が高かった。地元の高校教員からは自学への評価、期待について聞くことが増えていることから、コミュニケーションの機会が限られる地方の高校には必要な情報を十分に届けきれていないのではないかと考えた。「地方の高校教員に、生徒に勧めたくなるような自学の情報を届ける」という学生募集の課題が明瞭になり、2018年度募集用の教員向けデータブックを作ることにした。
 北陸・中国・四国の各エリアは関西の大学への進学者が多く、進学率が堅調に伸びている県があるため、特に重視している。近年、北陸からの志願者がやや減るなどエリアごとの課題も顕在化しつつあるため、これら3エリアに絞ってそれぞれの課題に対応した内容で作り分けることにした。

●「地元志向」を動かすため、京都の魅力もアピール

 データブックの中身を検討する段階では自学の受験動向調査に加え、学校基本調査やベネッセコーポレーションの入試結果調査等も活用。エリアごとの出願・進学傾向、自学の認知度を分析し、競合校と比較した。
 北陸地区では、富山県で徐々に京都への流出が減り、石川県では近年、地元進学率が5%以上上昇しているといった傾向を確認。地元国公立大学との比較に基づく京都産業大学の魅力、京都という街の魅力、そしてUターン就職の実績などを伝えようと考えた。中国地区では広島、岡山の両県で地元進学率が比較的高いこと、四国地区では愛媛以外の3県で進学者数が最も多いのが地元国立大学であることを確認。両地区で、関西の競合校への進学者が増えていることも分かった。これらの分析をふまえ、中国・四国では競合校を意識した学びの特色をアピールすることにした。
 一方、高校教員を対象にした調査からは「高校訪問で知りたいこと」の上位2つが入試と就職実績だということが判明。入試情報の中でも特に過去問のニーズが高いというデータをふまえ、別刷りで英語の過去問分析をつけることにした。
 こうした分析に基づくコンテンツとして、北陸版は冒頭の見開きページで、古都・金沢との比較を意識した「17の世界遺産」をアピール。Uターン就職者の数を目立たせたうえで、後半ページの就職先一覧やUターン就職の支援につなぐ構成にした。一方、中国版と四国版では2016年度から2018年度にかけて続いた改組による新設学部・学科を紹介し、「動きのある大学」を印象づけている。

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●新しい動きを伝え、自学に対する高校教員の固定観念を変える

 忙しい高校教員に、コンパクトに情報を伝えるための工夫も取り入れた。インフォグラフィックの手法を使い、数字やキーワードを目立たせて「見てわかる」データブックをめざした。就職先の一部を社名のロゴにしたのも同じねらいだ。全9学部の紹介ページでは、それぞれの特色を一つに絞り、各エリアにある大学や京都にある競合校の同系統の学部名も示して併願をイメージさせている。
 入学センターの雨宮ゆり氏によると、データブックを手にした高校教員が特に興味を示すのは高校別の出身学生数だという。「『うちの学校も入学者があと○人増えたらここに掲載されるんですね』と言われるなど、反応がいい。次年度はこのコーナーの拡充を検討したい」。京都産業大学と各エリアの高校や企業とのつながりを示すこのデータブックを通して高校教員が自学を身近に感じ、生徒に勧めてほしいとの考えだ。
 「本学に対して、『男子学生が多いバンカラな大学』というかつてのイメージを持ったままの教員も多いが、実際には学部の新設・改組に伴って女子学生が増えている。女子に配慮した施設・設備を整備するなど、どの学生にも開かれた魅力ある大学に変わりつつあるという新しい動きを知ってほしい」と雨宮氏。京都産業大学の新しい姿を伝えるために、これからもデータに基づく広報を重視するという。


*募集広報、大学広報に関する記事はこちら

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