2016.0915

早稲田大学-児童養護施設出身者対象の予約型奨学金を導入

この記事をシェア

  • クリップボードにコピーしました

3行でわかるこの記事のポイント

●4年間で約1000万円の支援×年10人の採用候補者を予定
●高校2年生、退所2年以内の志望者の申請も受け付け中
●地方の受験生対象の予約型奨学金も拡充

早稲田大学は2017年度入学者から、児童養護施設出身者を対象とする入学前予約採用給付型奨学金「紺碧の空奨学金」を導入する。4年間、学費の全額免除に加えて生活費も支給する手厚いサポートによって経済的困難を抱える優秀な生徒を受け入れ、学生の多様化にもつなげたい考えだ。


●採用候補者選考に高校での成績要件は設けず、学ぶ意欲を重視

 「紺碧の空奨学金」は、①入学検定料(センター試験は除く)と入学金を免除、②授業料、実験実習料等、その他諸経費を免除、③月額9万円を給付という内容で、原則として4年間継続的に支援する。一人あたりの4年間の支援総額は最大約1000万円となり、年10人ほどの採用候補者を予定している。
 8月1日から9月30日まで申請を受け付け、書類選考と面接によって11月上旬に採用候補者を決定する予定。高校での成績の要件は設けず、早稲田大学で学ぶ意欲を重視する。採用候補者には、入試方式を問わず、合格して入学した場合の奨学金受給資格が確約される。 

 学生部長を務める齊藤泰治教授は、この奨学金のねらいについて「本人に責のない経済的な理由で早稲田大学への進学を断念することのないよう支援する」と説明する。複数の児童養護施設での調査でわかった進路選択に関する課題をふまえ、2018年度入試を受験する高校2年生も申請対象に含めた。入所者は18歳になると施設を出なければいけないため、高校低学年のうちから自立の準備に追われ、大学に進学したくても日々の勉強をする余裕もないという実情に配慮したという。2年生のうちに大学進学後の奨学金が約束されれば、不安なく勉強に専念できるというわけだ。同じ問題への配慮から、施設を退所して2年以内の者も2017年度入試での申請対象者としている。
 奨学生とは入学後、毎月、面談を行うなど、経済面以外でも手厚いサポートを予定している。

●地方出身者対象の奨学金は入学時の一時的負担の大幅軽減へ

 首都圏以外の受験生を対象として2009年度に創設した入学前予約採用給付型奨学金「めざせ!都の西北奨学金」も、2017年度に拡充する。2016年度の採用候補者数は一般・センター入試1200人、指定校推薦90人だったが、後者の定員を撤廃して基準に適合する申請者を全員、候補者にすることとした。さらに、これまでは7月以降に奨学金(年額40万円)として給付していたが、2017年度からは半期(春学期分)授業料相当額を入学時納入金から差し引く形に変更。入学時点では入学金20万円と諸経費のみを納めるだけですむようになる。
 齊藤教授は、これらの奨学金のもう一つのねらいとして学生の多様化の促進を挙げる。「出身地や生活のバックグランドなど、様々な学生が集うことによってより良い学びの場が形成される」。
 さらに、国公立志向が強い地方の高校生に対して学費負担を国公立並みに軽減する支援策を提示することによって、優秀な学生を獲得したいとの思惑もある。8年間継続してきた「めざせ!都の西北奨学金」が地方からの志願者増につながっているかどうかは、今後、検証する考えだ。