2017.0126

文科省「私立大学振興検討会議」で私学助成のあり方を議論

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3行でわかるこの記事のポイント

●補助金が減り、学納金への依存度が高まる
●「機能別分化によって税金投入を納得させよ」との意見も
●中教審では今後、東京での新増設抑制も議論

文部科学省の有識者会議「私立大学等の振興に関する検討会議」の第11回が1月25日、都内で開かれた。私学助成について、「授業料政策による大学間競争を促すしくみを」「学費負担軽減は、機関補助から個人補助への切り替えを」等、抜本的なしくみの見直しが提案された。

「私立大学等の振興に関する検討会議」におけるこれまでの議論の内容はこちら。
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●経常的経費に占める学納金の割合は25年間で7ポイント増加

 会議の冒頭で文科省から、私立大学の財政基盤、私学助成の概要について説明があった。2014年度の全私立大学の帰属収入に占める学生納付金の割合は76.3%で、25年前から7.3ポイント増加。一方、経常的経費に占める経常費補助金の割合は、1980年度の29.5%をピークに徐々に縮小し、2015年度は初めて1割を切り9.9%になった。私学助成が減り、学生納付金への依存度が高まる状況が鮮明になった。
 私学助成の目的は私立学校振興助成法で、①私学の教育条件の維持向上、②学生等の修学上の経済的負担の軽減、③私学経営の健全性の向上-と定められていることも説明された。

●「大規模大学に有利なしくみ」に疑問の声

 続く議論で委員から出た主な意見は、次の通り。

(1) 私学助成拡充の是非
・まずは、奨学金の充実と連動した授業料値上げや寄付金集め等、自主財源からの収入の確保、および人件費等の支出の削減に徹底的に取り組み、その上で私学助成をどうするか議論すべき。
・収支の改善が私立大学の課題であるのは明白だが、寄付金を集めたり、支出を大幅に削ったりというのは現実的に難しい。経常的経費がふくらんできている以上、それに合わせて補助金も増やすべきだ。
・私立大学は、自らの価値について財務省や地方公共団体を納得させきれていない。機能別分化を進めて「こういう大学なら応援したい」と思わせてこそ、地方公共団体からの補助金や国民からの寄付が期待できる。
・高等教育に対する公的資金の投入を増やしたうえで、国公私を問わず、同等の支援をすべき。私立大学生の経済的負担を本気で何とかしなくてはいけない。

(2) 私学助成のしくみの見直し
・授業料政策によって学生募集の競争を促すべきで、授業料を中心にした私学助成のしくみを考えてもいいのではないか。一定の条件の下、授業料を値下げする大学を補助金でカバーする、一方で募集力のある大学は特例的に定員増を認めて授業料を高くし、代わりに補助金を減らす等のしくみもあり得る。
・全ての項目にわたって一律に2分の1以内の補助というのではなく、人件費は大学の自助努力を促す補助ルールにし、教育研究経費は国立と私立を同じ補助率にするなど、めりはりをつけることも検討すべき。
・私学助成で3つの目的をすべて果たすのはもはや難しい。学費負担の軽減は他の2つの目的とは異質であり、今後も機関補助でやっていくのが適切なのか。個人補助への切り替えも議論する余地がある。
・私学助成は教員数、学生数をベースに算出される。大規模大学であれば教育の質が悪くても多く配分されるしくみは改善すべき。
・私立大学等改革総合支援事業の申請でいくつもの施策の実施状況が問われるが、学外との連携等、小規模大学にとって難しいものも多く、不利になりがち。

 文科省は、これまでの会議で議論が深まったテーマについては2016年度内に提言をまとめ、それ以外については次年度も会議を継続して議論したい考えを示した。
 なお、同じ25日に中央教育審議会大学分科会も開かれ、2月以降、新たな委員でスタートする中教審における論点整理の案が示された。2005年の「我が国の高等教育の将来像(答申)」に代わる新たな高等教育のグランドデザインが検討される。論点整理案では、先の閣議決定を受け、「東京における大学の新増設の抑制や地方移転の促進等についての緊急かつ抜本的な対策」の検討も明示された。