2017.0925

CEFR対照表の精度向上の作業部会を設置―英語4技能検定連絡協議会

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3行でわかるこの記事のポイント

●高校・大学関係者、検定実施団体等の連絡協議会が開かれた
●文科省が、学習指導要領との整合性など選定要件案を提示
●受検料負担軽減に関する要望が続出

2021年度入試からスタートする大学入学共通テストでの英語外部検定試験の活用について、学校関係者らが話し合う「英語力評価及び入学者選抜における英語の資格・検定試験の活用促進に関する連絡協議会」の会合がこのほど開かれ、文部科学省から検定試験の選定要件案が示された。委員からは、受検者の経済的負担の軽減策を求める意見が相次ぎ、共通テストで検定試験を利用する大学が会場を提供することによって検定料を安く抑えることも提案された。
*会議の資料はこちら
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/134/shiryo/1395611.htm


●CEFRとの対応関係の検証体制も要件に

 この連絡協議会は、外部検定の活用について高校・大学はじめ関係団体の意見をすり合わせ、検定試験実施団体との調整を行うことなどが目的。学校関係者、検定実施団体のほか、英語教育の専門家や経済団体等も参加している。
 英語外部検定試験について、7月に発表された大学入学共通テストの実施方針では、「必要な水準および要件を満たしているもの」を入試センターが「認定」するという基本的な枠組みが示された。文科省はその後、入試センターの本来の機能をふまえ「法的根拠に基づく認定制度ではない」として、「認定」ではなく「参加」と「より正確な表現にあらためた」(文科省の担当者)。対象となる検定試験の結果を入試センターに一元的に集約して大学に提供する「英語4技能大学入試成績提供システム」(仮称)を構築し、このシステムへの参加を希望する実施団体が参加要件を満たしているか確認するという枠組みだが、要件の中身については、これまで示してきたものから大きな変更はない。
 会合では、「参加要件」の案として「英語4技能のバランスのよい評価」「学習指導要領との整合性(文部科学省が確認)」「CEFR(外国語の学習・評価のためのヨーロッパ共通参照枠)との対応関係、その根拠となる検証方法や研究成果等の公表・検証体制」「毎年度4月から12月までの間での複数回の試験実施」「経済的に困難な受検生への配慮等、適切な検定料の設定にかかる公表」「障害等のある受検生への配慮にかかる公表」「採点の質の確保」などが示された。 

●「全都道府県での検定実施」の要件化は現時点では難しい

 共通テストの実施方針では「毎年度4月から12月の間に全都道府県で複数回実施することを求める」となっていたが、今回示された要件案では「全都道府県で」という文言がなくなった。現状、実施団体によっては年度ごとに実施都道府県が変わるなどの理由で、会場を明示していないケースもある。加えて、採算割れしない程度に受検者数を確保できるか見通せない現時点で会場の増設を確約できないという事情も。一方、高校側は地元で実施されるかわからない検定試験の受検には消極的だ。こうした状況の下、最初から全都道府県での実施を求めるのは難しいと判断し、「地域による受検機会の偏りをなくすための配慮」という要件案になった。
 今後は連絡協議会での議論も反映して入試センターが参加要件を確定し、実施団体からの申請を受け付ける。3月をめどに選定結果、および各検定試験についてCEFRの段階別成績表示による対照表が公表される予定だ。
 CEFRの対照表については、各実施団体からすでに示されているものの信頼性を疑問視する声も出ている。そこで、連絡協議会の作業部会で実施団体や英語教育の専門家らが対照表の精度を上げるための検討・調整を行う。

●バウチャー導入、行政施設の利用なども提案された

 連絡協議会では、委員から「高校レベルの英語力を中心に見ることが検定試験の要件になるのか」との質問が出た。文科省は「高3生の英語力のレベルに合った測定にするが、一方で多様な英語経験を重視する観点から、なるべく幅広く見たいとも考えている」と説明。「4技能のバランスをどこまで見るのかという観点が要件から抜けている」との指摘に対しては、「まずは4技能をきちんと評価しているかどうかを重視する」と答えた。
 委員からは、受検にかかる経済的負担を懸念する発言が相次ぎ、バウチャー(サービス利用券)の導入も提案された。受検料の大部分を占める会場使用料を安く抑えるために大学が無償で会場を提供したり行政機関の施設を利用したりするという案、実施団体が利益の一部を拠出し合って受検料を支援する案などが出された。高校関係者は「受検のための特別な対策が必要になると経済格差による不公平が生じるので、学校の授業で修得した力を評価する検定を選んでほしい」と要望した。
 実施団体からは、入試での活用を目的とする受検に関しては割り引き制度を設けるなど、負担軽減に協力的な声もあるというが、これについても、どれくらいの受検者が集まるか見通しがつかない段階では具体的な施策を示せないという事情があるようだ。


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