2017.0215

学校基本調査から見える進学動向―38県で地元大学進学率50%以下

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3行でわかるこの記事のポイント

●過年度卒業者を含む大学進学率は52.0%で過去最高
●進学者の8割が流出する県が11に上る
●進学率が伸びている県は「進学者潜在エリア」

2016年度学校基本調査(確定値)を基に都道府県別の大学進学の動向を分析すると、地方における地元進学率の低さなど、大学の定員割れにつながる要因があらためて浮かび上がる。今後の学生募集戦略を考えるための材料として、進学率の伸びにも着目してデータを見ていく。
2016年度学校基本調査(確定値)のデータはこちら
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/NewList.do?tid=000001011528

*当初、2011年度と2016年度の大学進学率を比較する記事になっていましたが、2011年度は東日本大震災による進学率への影響があったことをふまえ、2010年度と2016年度の比較に修正しました。


●流出の背景には地元大学の収容力の問題も

 2016年度学校基本調査(確定値)によると、大学等進学者数(現役。短大も含む)は58万3704人、大学等進学率(高校卒業者数に占める割合)は54.8%で、前年より0.2ポイント上昇した。
 一方、過年度卒業者を含む4年制大学進学者数は61万8423人で、大学進学率(18歳人口に占める割合)は前年から0.5ポイント上昇して52.0%、過去最高となった。グラフ①は、都道府県別の大学進学率を高い順に示している。東京(72.7%)は鹿児島(35.8%)の倍以上となっている。

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 では、過年度卒業者を含む大学進学者のうち、どの程度が地元に残るのか。グラフ②では、地元都道府県の大学に進んだ者の割合を高い順に示している。38県で進学者の半数以上が県外に流出し、8割以上が流出している県も11ある。
 

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 2015年度のデータに基づく下図の参考資料が示すように、地方では地元の収容力が十分ではないために県外に進学先を求めざるを得ないという事情もある。和歌山、長野などがその例と言える。

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 一方で、近隣府県への移動の便、地元志向の度合い等による影響も大きく、収容力が100%を超える滋賀で地元進学率が20.9%にとどまり、収容力60%前後の沖縄で地元進学率が54.3%に上るといった逆転現象も起きている。結果、数字だけを見れば地元の進学者のみで定員を満たせるはずの多くの地方大学が定員割れに陥っている。

●沖縄、岩手などは6年間での進学率の伸びが2.5~4ポイント

 2018年度入試からは18歳人口が再び減少に転じ、地方を中心に大学の学生確保はいよいよ厳しくなる。地元の進学者をつなぎ留められるよう、そして地元以外の進学者も引き付けられるよう、それぞれのニーズをふまえた魅力ある教育と学生支援を整えたうえで、魅力を効果的に伝える学生募集の戦略性も、従来以上に重要になる。その戦略立案の材料の一つとして、前出の2016年度の大学進学率に2010年度の進学率と6年間の増減を加えたのがグラフ③だ。

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 2016年度の進学率下位の中にも、岩手や沖縄のように6年前から約2.5~4ポイント上昇し、収容力は十分でない県もある。これら進学率が上昇傾向にある「大学進学者潜在エリア」の市場掘り起こしは、学生募集戦略の柱の一つになり得るだろう。
 例えば、地元進学率が上位の沖縄にあって、県外の大学に進むのはどのような志向を持つ高校生で、卒業後はどうしているのか。一方、地元にこだわる高校生は、どんな条件が整えば県外の大学に目を向けるのか。それぞれの大学選びの背景として、高校ではどんな進路指導がなされているか。
 こうした情報収集と分析に基づき、そのエリアが自学の新たな募集市場になり得ると判断した場合には、エリアの高校生に低学年のうちから自学を認知させ、興味を持ってもらうための広報を展開したいところだ。志望校として意識させ、受験直前までの動向を継続的に分析してタイムリーな情報発信をしかけ、効果を検証したうえで軌道修正を図るという戦略的な学生募集広報が求められる。