2016.1115

文科省が新テストの記述式の採点を民間に委託する案を提示

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3行でわかるこの記事のポイント

●「大学採点方式だと使えない」との私大の声に対応
●「40~80字の民間採点問題」と「文字数がより多めの大学採点問題」から大学が選択
●「採点する大学によって点数が違っても公平性に問題なし」との見解表明も

文部科学省は、センター試験に代わる「大学入学希望者学力評価テスト(仮称。以下『新テスト』)」に導入する国語の記述式問題について、民間事業者に採点を委託する案を国立大学協会(国大協)に示した。8月に示した「大学による採点」の方式に追加する形で、採点者が異なる2パターンの問題を作成し、大学に選ばせるという内容だ。国公私を問わず多くの大学が新テストを活用し、すべての受験生に記述式問題を課してほしいとの考えで出された新たな案に対し、私立大学がどのような反応を示すか、注目される。
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●国語の専門家でなくても採点可能な内容

 文科省の案は「記述式の実施イメージ(検討中の案)」として、11月4日の国大協の会議後に示された。国語の記述式は、次の2パターンとなっている。

*パターン1
「より深く能力を問う」難易度「中~高」の問題で、パターン2より記述文字数が多い。センターが字数等の形式面を確認したうえで採点基準を提供し、各大学が採点する。
*パターン2
「基盤的な能力を問う」難易度「中」の問題で、80字以下程度か40字程度の短文記述。センターが民間事業者等に採点を委託し、段階別表示まで行って各大学に提供する。

 パターン1の問題に加え、パターン2で80字以下程度の問題を1問または40字程度の問題2問を作成し、受験生は出願先の大学が指定した問題に回答する。パターン1とパターン2を組み合わせて出題することも想定されている。
 大学から出ている「国語の記述式の採点は国語の専門家でないと難しい」との声をふまえ、両パターンとも「国語の専門家以外の者も採点可能な内容」と明記。パターン1は「人文学以外の教員、高校の退職校長・教員などの外部人材」、パターン2は「民間事業者」を例示した。
 記述式に関するセンターからのデータ提供開始時期はいずれも、現行の「私立1月31日」「国公立2月2日」(2017年度入試の場合)から数日後ろ倒しの可能性を検討するという。
 8月に示した大学による採点方式に対しては私立大学から、日程や体制の面で否定的意見が多く、日本私立大学団体連合会は「記述式問題を含めた新テストをほとんどの私立大学は利用できなくなることが危惧される」との意見書を文科省に提出している。
 こうした状況に対し文科省は、大学による採点方式を「高校教育のスケジュールに影響を与えることなく、限られた期間の中で実施でき、作問内容を柔軟に設定することが可能となるなどの点で優れた選択肢」と評価。新たな案では、相対的に多い文字数でより深く受験生の力を測れる大学採点方式を維持しつつ、採点にかかる大学の負担を軽減し新共通テストの利用を促すために民間事業者による採点方式を加えた。

●私大関係者の意見もふまえ実施方針を決定

 文科省は今回、大学による採点方式に対して出されている疑問や否定的意見に答える文書も提示した。「自ら作成したものではない試験問題について、出題意図等に関する採点者間の共通理解の下、責任ある採点ができるか」という疑問に対しては、「センターが採点基準を作成して各大学に提供するので問題はない」との見解。「受験者が複数の大学を受験する場合、同じ答案の点数が大学によって違っても問題はないか」との疑問には、「競争試験での公平性は、合否判定の単位となる出願区分ごとに公平な扱いをするということなので、複数大学を受験する場合に大学間で点数の差が生じたとしても、公平性に問題があるということにはならない」との考えを示した。
 国大協は新たな提案に対する見解を年末までに示す方向だ。文科省は私学団体や私立大学関係者の意見も幅広く聞いたうえで、2017年度初頭に新テストの実施方針を発表することにしている。