乗り切ろう!コロナ危機⑫ Web広報で高校に新入試を発信-島根大学
学生募集・高大接続
2020.0709
学生募集・高大接続
3行でわかるこの記事のポイント
●募集人員の20%強を集める「育成型入試」の早急な認知拡大が課題
●Web会議を使った高校訪問で情報交換
●オンデマンドと双方向オンラインの使い分けがカギ
島根大学は2021年度入試から新たな総合型選抜をスタートさせる。その認知拡大のために推進しているWebによる募集活動について、大学教育センターの泉雄二郎教授に話を聞いた。
島根大学は入試改革元年の2021年度入試で 総合型選抜「へるん入試®」をスタートさせる。254人という募集人員は、全体の20%強。コロナ禍で対面広報やリアルでのイベントが実施できない中、この新入試方式を高校現場にどう広報し、浸透させていくかが課題となった。「島根大と言えば『へるん』と呼ばれるだけの入試と教学を実現したかった。なぜならこの入試は、出願前教育→出願→入試→入学前教育→入学→初年次教育→専門教育というように、一連の教育が連携して初めて成立する高大接続の『育成型入試』であり、プログラムだからだ」。泉教授はそう話す。
「へるん入試®」では、大学入学共通テストは課さない。その代わり「学びのタネ」(特定の領域・事象に対する好奇心や探究心)を評価し、自由な発想、ユニークな視点を持つ学生を選抜する。これによって学生の多様性を生みだし、学内を活性化することが狙いだ。
国立大学の入試にしては珍しい親しみやすい名称は、島根大学の前身である尋常師範学校で講師を務めた小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)の愛称「へるん」にちなむ。多方面で活躍した「へるん」に、高校生の多様な可能性を重ね合わせている。
知識重視の入試から脱却し、学力の3要素を中心に従来とは異なる視点で学生を募集し育てる「育成型入試」。このような総合型選抜を成功させるためには、高校生だけでなく、高校教員の認知、深い理解、そして協力が欠かせない。地元の高校を中心に直接訪問し、教員に対して丁寧な説明、コミュニケーションを図ろうとしていた矢先に新型コロナ問題が起きた。
休校、外出自粛を要請される中、高校現場で普及が進みつつあるZoomなどのWeb会議システムを活用するというアイデアが出た。「それまで募集広報活動に使ったことはなかったが、Web会議の利点は、こちらから発信するだけでなく相手からも情報が得られること。これによって高校現場、受験生との距離を縮めることができるのではないかと考えた」(泉教授)。
Web高校訪問の狙い(成果)は出願に必要な情報を担任に直接伝達し、出願への不安感を低減すること。方針、実施内容は ①広範なエリアを広報ターゲットにし、高校→学年団→各担任にフォーカスした情報を提供する、②入試に関する一般的な基本情報と、個別に応じる情報を切り分けて提供する。特に後者については、各学校のカリキュラムとへるん入試®とのつながりに関する情報提供を重視する、③プログラムは「学年団単位や進路担当、3年生の担任といった少人数に対する入試の説明→質疑応答→理解度等を問うアンケート実施」で1時間におさめる-とし、4月末からWeb高校訪問を開始した。
Web高校訪問の初回は4月28日、島根県内の公立高校を対象に実施した。1年生~3年生の担任を含む23人が参加。「出願できそうな生徒像が実際に思い浮かぶかどうか」の情報交換もでき、アンケートの評価も高かったことを受けて9月まで他の高校においても続ける予定だ。
島根大学ではWeb高校訪問のほか、以下のことを展開する。
・Web入試説明会:進路指導主事、3年生の担任を対象にオンデマンド説明動画の配信とオンライングループ相談を組み合わせて実施。
・Web地域志向型入試面談:地域志向型入試に関心のある生徒を対象にオンラインでの個別面談を行い、生徒の志望と自学とのマッチングを図る。
・入試相談:高校教員、高校生、保護者が対象。
泉教授は「オンデマンドコンテンツでは幅広いアクセスが得られて情報が広範囲に伝わる。受験生側にとっては 関心のあることに集中して情報収集できる利点がある。一方で双方向のオンラインでは、一人ひとりに丁寧に向き合える、複数の相手に情報を同時に伝達しつつ質疑応答ができるという利点がある」と話す。
多くの大学がWebを使った広報活動を実施する中、オンデマンドと双方向のオンラインそれぞれの利点を意識した活用が求められる。