2019.0703

ベネッセ入試結果調査① 併願数拡大が続き、私大合格者数は増加に転換

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3行でわかるこの記事のポイント

●私大入試の難化と新入試スタートを意識した安全志向が表れた
●志願者数は国立大が前年並み、私大は引き続き増加
●年内入試での合格をめざす動き、終盤まで粘る動きの両方が顕在化

ベネッセコーポレーションは全国の高校の協力の下、2019年度入試の結果をまとめた。国立大学では志願者数の減少傾向が落ち着いて前年並みとなり、私立大学は引き続き志願者数が増加する一方、合格者数は近年の絞り込み傾向から増加に転じた。ベネッセ教育情報センターの分析に基づいて2019年度の入試結果を2回に分けて解説する。

*各データはベネッセの分類・集計によるもので、各大学が公表している数値とは異なる場合がある。*大学の公表数値を基にしたデータは5月中旬までにベネッセが収集・確認できた情報を反映している。


 ベネッセコーポレーションは2019年度入試について、全国3633の高校から50万9145人分の出願・合否結果の情報提供を受け、進研模試データを加えて分析。ベネッセグループが集めた各大学の志願者データや次年度入試の変更点等の情報も加え、夏休み前後に本格化する志望校選びの参考にしてもらうために高校に還元している。これらの情報に基づき、今回は国公立大学と私立大学、それぞれの全体的な志願動向を取り上げる。

●国公立大学の志願動向―AO入試の志願者数が大幅増

 国立大学の一般入試志願者数は前期日程と後期日程合わせて55万153人、対前年指数100だった。推薦・AO入試拡大に伴う後期日程の募集人員削減などを背景に、2018年度までの数年間は志願者数の漸減傾向が続いたが、今年度は前年並みに落ち着いた。公立大学の一般入試志願者数は前期・中期・後期の各日程合わせて13万9683人で対前年指数は103。
 推薦・AO入試等による入学者の割合を全体の3割程度にするという国立大学協会の方針もあり、国公立大学におけるこれらの入試方式による募集人員は今年度も増加。志願者数も増え、特にAO入試での増え方が顕著だった。

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 後期日程の欠席率は57.2%で7年連続の上昇。前期日程で合格するケースに加え、後期日程に出願はしたものの早々にあきらめて私立大学への進学を決める受験生の増加が要因として考えられる。

●私立大学の志願動向―センター後期の志願者数の対前年指数は133

 私立大学の一般入試志願者数は375万人で対前年指数106と引き続き増加した。近年、入学定員管理厳格化の下での合格者数絞り込みによって私立大学入試が難化していることに加え、2021年度からの新入試を前にした現役志向、安全志向の高まりも重なって受験生が併願校を増やしていることが志願者増の要因だ。
 首都圏では特に、センター試験の平均点上昇を背景にしたセンター利用方式の志願者増、および入試の難化で終盤まで粘る受験生の増加を背景にした後期試験の志願者増が顕著で、対前年指数は一般入試後期が121、センター後期が133だった。hoshikibetsu.png

 一方、全国の一般入試の合格者数は89万人で対前年指数103。私学助成が不交付となる入学定員超過率の基準の段階的強化が一段落したのを受け、私立大学全体の合格者数は前年度より増加、入試の難化傾向に変化の兆しもうかがえる。
 推薦・AO入試はいずれも募集人員が減ったが、志願者数は増え、特に推薦入試で大きく増加。難化する一般入試を避け、年内入試で合格を決めたいという心理が働いたと推測される。

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●学問系統別の志願動向―文系・理系問わず情報系が人気

 国公立大学と私立大学を合わせ、学問系統別の志願動向を見ていく。
 まず、文理別の大きな傾向としては、国公立大学で理系の志願者数が減少し、文系で増加。私立は文系人気の回復傾向がやや落ち着き、理工学系統を中心に理系の志願者数増が続いている。

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 学部系統別の志願者動向で国公立大学と私立大学に共通する点として、語学・国際関係学での大幅な増加がある。授業や探究活動を通して高校生がグローバル社会での活躍に関心を高めていること、そのニーズを反映して大学で国際系学部の新設が相次いでいることなどが背景にある。

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 同じく社会動向に対する高校生の敏感な反応がうかがえるのが、情報学系統の人気の高まりだ。AI、IoT、ビッグデータ等のキーワードが毎日のようにメディアに登場する中、急進展する情報分野で活躍したいと考える高校生が増えており、経済・経営・商学、総合科学等の文系学部、理系学部いずれでも情報系の学科の志願者数が増加。特に国公立大学では理学部(対前年指数127)、総合科学系学部(同126)で、私立大学では総合科学系学部(同133)、経済・経営・商学系学部(同126)の情報系学科での伸びが顕著だ。

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 「ベネッセ入試結果調査」シリーズ次回は、私立大学の志願動向と入試結果についてさらに詳しく見ていく。