2016.0204

大学教育部会・篠田委員が読み解く「専門的職員に関する調査」結果

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3行でわかるこの記事のポイント

中教審で進む「大学職員」の審議

中央教育審議会は、大学職員の位置付け、役割、育成について審議を続けている。高度な専門性を持つ「専門的職員」の制度化についても議論される中、「大学における専門的職員の活用の実態把握に関する調査」の結果概要が2016年1月18日の中教審大学教育部会で示された。同部会の委員で、『Between』2015‐2016年12‐1月号に「職員の新たな役割と専門性の向上」について寄稿した桜美林大学の篠田道夫教授に、調査結果から読み取れることと、審議内容をふまえて今後大学が取るべき方向性について聞いた。


●配置したい専門的職員はIRや執行部補佐

 この調査は文部科学省が実施し、2015年9月14日から10月2日までに全国の大学・短大559校から回答を得た。図表1から、学生の健康管理(66.6%)、図書(66.4%)、就職・キャリア形成支援(54.2%)、情報通信・IT(48.0%)等で専門的職員を配置している大学が多いことがわかる。いずれも司書やキャリアカウンセラーをはじめ、有資格者の配置が多いと考えられる。
※( )内は全体平均

図表1

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図表2

shinoda_zu2.jpg 

 篠田教授が特に着目しているのは、「今後配置したい職務で特に重要と考えている専門的職員」(図表2)だ。10%以上となったのは、インスティテューショナル・リサーチ(IR、22.9%)、執行部判断に対する総合的な補佐(13.9%)、地域連携(10.3%)だった。
 「トップ2となったIRと執行部判断に対する総合的な補佐は、学長や執行部の適切なリーダーシップと意思決定をサポートする役割であり、これらに専門的な職員を配置したいと考える大学が多いということに注目すべきだ。データの意味を理解し、政策提言を行うには、高等教育全体に対する知見と、所属する大学の基本政策や固有の事情に精通した"専門性を備えたゼネラリスト"が必要になる」と述べる。

●中教審案では専門的職員の配置は見送り、SDの義務化を提言

 第8期中教審での「大学職員」に関する審議では主に、①専門的職員の配置、②職員の資質向上・SDの義務化、③「事務組織」の見直しについて話し合われてきた。審議内容がまとめられた「大学運営の一層の改善・充実のための方策について(案)」(2016年1月18日大学教育部会配付)では、以下のようになっている。

①専門的職員の配置について
 今回の調査結果では、各大学における専門的職員の配置が多様であり、求める資格、処遇等が未確立であることなどから、配置を制度化せず、個別の大学が実情に応じて専門的職員についての情報収集や環境整備に取り組むよう提言している。

②職員の資質向上・SDの義務化について
 「法令において、大学が、大学運営に必要な職員の資質・能力の向上を図るため、当該職員の研修について計画し、その機会を確保することについて規定することとしてはどうか」という記述によって、SD義務化を提言している。

③「事務組織」の見直しについて
 職員の役割が高度化し、より高い専門性の発揮が求められる中、「大学は、その事務を処理するため、専任の職員を置く適当な事務組織を設ける」とする大学設置基準第41条改正の必要性が議論されてきたが、具体的な改正案は示されていない。

●メッセージを読み解き、職員が能力を発揮できる体制構築を

 篠田教授は、「2014年の学校教育法の改正によって、学長の権限の拡大、教授会の位置付けの見直しが行われた。学長の統括力をさらに高めるには、SDの義務化と大学設置基準第41条の改正が必要」との認識を示す。「ただし、第41条の改正がどのようになろうとも、自学における職員組織の位置付けや職員の役割を見直すことはできるはず」と言う。

 「大学運営の一層の改善・充実のための方策について(案)」には、「大学の事務組織及び事務職員が、当該大学の目標の達成に向け、これまで以上に積極的な役割を担い、大学運営の一翼を担う機能をより一層発揮できるよう、(中略)今後の在るべき姿について更に検討を深め、その結果を法令等に反映させることが適当ではないか」との提言があり、篠田教授はこれを「中教審からのメッセージ」と表現する。

 「各大学はこのメッセージを読み解き、職員の能力向上とその評価のしくみ、教員と職員の実質的な協働によって大学改革を進めることができる体制を構築してほしい」と話している。