2014.0801

南山大学将来構想推進室 野呂昌満室長

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3行でわかるこの記事のポイント

キャンパス統合によって推進する文理融合の情報教育と国際教育

南山大学は、めざす姿をビジョンとして描き、その実現に向けた中長期計画をグランドデザインにまとめている。
計画の実行推進機関である将来構想推進室の野呂昌満室長に、グランドデザインの進捗状況および今後の教学改革について聞いた。

2027年をゴールとする3期のグランドデザイン

 南山大学のビジョンは、多様な人々との共生・協働によって新たな価値創造への貢献をめざすもので、「個の力を、世界の力に。」というキーフレーズで端的に表現しています。その実現に向けた中長期計画が2007年に策定した「グランドデザイン」であり、1期7年、2027年までの3期にわたる計画です。計画の遂行にあたって、その時々の状況を考慮しますが、常に立ち返る原点がグランドデザインです。重要なことは、グランドデザインがきちんと文章化されていること。ビジョン実現に向けた明確な言葉の存在が、ぶれることのない改革につながっていくからです。

 第1期(2007~2013年)の重点項目は、「既存学部を中心とした、ビジョン実現のための原型の構築」「ユニバーサル受け入れ体制の強化」「キャンパス計画検討」「理系分野の強化」「卒業生との連携強化」「柔軟な履修体制の検討」などで、ほぼ計画通りに実現できました。

 2014年は計画が本格的に動き出す第2期(2014~2020年)の最初の年です。当初の計画では「全国募集の強化」が重点項目でしたが、現在はこれを「18歳人口の減少による質の低下を防止する」と読み替え、東海3県の優秀な受験生の確保に力を入れています。

 他の重点項目「ビジョンに基づく教育・研究・社会貢献体制の本格的展開」については、企業で実施されているプロジェクトに学生が参加して卒業論文や修士論文をまとめるOJL(On the Job Learning)をいくつかの学部や研究科で導入しています。「e-ラーニングの本格的導入」に関しても、ネット上でのレポート提出、採点自動化、教材配付などを実現しており、第2期でさらに拡充させます。

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留学生の派遣と受け入れ、キャンパスの情報環境整備が国際化の鍵

 第2期の最も重要な実行項目はキャンパス統合です。それぞれ瀬戸キャンパスにある理工学部を2015年に、総合政策学部を2017年に名古屋キャンパスに移転・統合し、ワンキャンパスの総合大学としてスタートします。

 キャンパス統合にはさまざまなメリットがありますが、特筆すべきは、文理融合型の教育が可能になることです。

 現代社会は高度な情報技術に支えられています。その新たな環境の下に登場するビジネスやコミュニケーション形態に対応するには、情報技術そのものやインターネット上に生起していることを把握するための教育を、所属する学部に関係なく受けておく必要があります。

 また、情報化は産業構造を変化させる力を持っていますから、社会科学の視点も重要です。人文科学、社会科学、自然科学の各学問分野が1つのキャンパスに結集することにより、情報倫理に関する教育はもちろん、全人格的な陶冶をめざす統合的な教養教育が可能になるのです。

 キャンパス統合は、国際的に活躍できる人材の育成という本学のビジョン実現のための重要な施策の一つです。大学の国際化の鍵は、留学生の派遣と受け入れ、そしてキャンパスの情報化にあります。

 全ての学生が海外留学を経験し、学内で頻繁に外国人留学生と触れ合える教育環境の整備をめざします。併せてキャンパスの情報化が不可欠なのは、それによって、現地に行くことでしか得られない生活実感や文化的慣習の体感を除き、国内にいながらそれと同程度の経験を積むことができるからです。情報化されたキャンパスでは、短い留学期間であってもかなりの教育効果を挙げられると考えています。それは、キャンパスのどこにいても自分のスマートフォンやタブレット、ノートパソコンなどで世界とつながることができる情報環境によって実現します。こうした環境を整備することは、外国人留学生の受け入れにも効果的です。

 キャンパス統合を契機に、文理融合型の教育、および世界につながる情報環境の整備に支えられた国際化を推進する考えです。

クオーター制導入と全学生の留学必修化を検討

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 本学の教学面の将来像は、ミカエル・カルマノ学長が掲げる「国境のない学びの場」を創ることです。全学生の留学必修化や、1000人規模の外国人留学生の受け入れを実現するため、キャンパス統合が完了する2017年を目標に、クオーター制の導入を検討しています。クオーター制にすると学生が留学しやすくなるだけでなく、教員が研究に専念できる期間もできますので、研究に裏打ちされた教育内容の充実が期待されます。


 このほか、英語だけで授業を行う国際科目群の拡充、外国人留学生を対象とする日本語プログラムの充実などを計画しており、情報センターや国際センターなどの支援組織も、新設あるいは発展改組して整備します。学部の改組や新設も検討していきます。

 グランドデザインの全3期が終了する2027年に向けて、絶えざる自己改革に努め、ビジョンを実現する覚悟です。

南山大学 将来構想推進室室長
野呂 昌満

のろ・まさみ● 1958年生まれ。1981年慶應義塾大学工学部卒業、1986年同大学大学院工学研究科管理工学後期博士課程単位修得満期退学。1990年南山大学経営学部助教授、1998年同教授。数理情報学部(現在の理工学部)教授、同学部長、数理情報研究科長、総務・将来構想担当副学長等を経て2014年から現職。工学博士。専門はソフトウェア工学。