2016.0318

「新たな高等教育機関」の行方 その8

学生募集・高大接続

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3行でわかるこの記事のポイント

~中央教育審議会「実践的な職業教育を行う新たな高等教育機関の制度化に関する特別部会(第12回)傍聴報告~

審議経過報告案の最終まとめに入る

 年度末に提出される予定の審議経過報告案についての議論が続いている。文部科学省から出されている素案の文面の検討が主で、文言を大きく修正するような意見は出ていない。

職員と質保証は、他の審議会と並行して進行

 職員に関しては、素案に記述がほとんどない点が問題視された。社会への接点という意味で、教員と同等の影響力を持つということが共有された。なんらかの形で文面に反映されることになるだろう。
 質保証については、認証評価機関ができていないと新機関が立ち上げられないと読める記述を改めるよう求められた。また、機関別評価に加え分野別評価の観点も必要となる中、効率的にできる方法を考えることで一致した。
 いずれも大学教育部会など、別途、進捗している審議会と同調して進めることになる。

インターンシップをどう位置づけるか

 今回、最も多くの意見が出たのがインターンシップについてである。ただし、経過報告の文言修正という点では一点のみ。素案の「企業内実習(インターンシップ)」という記述が正確でないという指摘があり、部会長から「企業内実習を含む就業体験(インターンシップ)」という表現に改めるよう、指示が出された。
 この部会では、インターンシップは「正課での必修実施」「中長期」「有償(報酬あり)」「採用へ架橋」といったキーワードで語られてきたが、ここに来て微妙に風向きが変わっている。
 産業界からは企業負担が大きいため、中小企業では実施はほぼ不可能ではないかとの指摘があり、国からの支援が必須との見方が示された。現状のインターンシップへの申し合わせ事項(採用活動の一環としない)もこの会で改めて確認された。また、「インターンシップを必須にはせず、各高等教育機関で育てる人材像や学びの内容に応じて考えればいいのではないか」との考えを示す委員もいた。
 だが、この高等教育機関でのインターンシップは必須要件で、採用に直結させて考えるべきであるという意見が大勢を占めていることも確かだ。学生が実際に将来働くかもしれない職場で専門実習を受けることの意義は大きい。実際の運営にあたっては、たとえば商工会議所がコーディネートをし、コンソーシアムのような形で進める案などが出された。
 いずれにせよ、学生の人生を考え、将来の職業に直結する教育を行うべきということでは一致しているため、インターンシップは実施の方向で決着するだろう。とはいえ、学年・内容・期間・費用負担等は流動的だ。ここが弱くなると新機関の存在意義自体も揺らぎかねない。