2016.0303

「新たな高等教育機関」の行方 その7

学生募集・高大接続

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3行でわかるこの記事のポイント

~中央教育審議会「実践的な職業教育を行う新たな高等教育機関の制度化に関する特別部会(第11回)傍聴報告~

●審議経過報告案も大詰め

 議論されている「新たな高等教育機関」は2016年度中には制度設計が完了し、所要の措置を講じるとしている。今は2015年度末に向けて「審議経過報告案」が急ピッチでまとめられているところだ。審議経過は、3/9の大学教育部会、3/18の大学分科会で報告される予定である。

●「大学との差別化」最終の見立て

 この会議では終始、「既存の大学とどう差別化するか」が議論されてきた。いまだに反対意見もあるが、概ね、委員の意見は収斂してきている。それは永田部会長や寺田委員の以下のような発言に集約されるだろう。
 「新機関でやろうとしていることは既存の大学でもできないことはない。だが、現状、今の大学ではうまくできていないし、これからうまくできる見込みも少ない。それは制度上、今の大学が『職業教育目的』でないことに起因する。職業教育を目的とする『大学』 を新設することによって、これからの日本を支える新しい人材の育成が活性化する」。
バックボーンには、社大接続が上手くいっていない現状がある。学生は「簿記」や「英会話」などを大学で学べないため、ダブルスクールとなる。企業の採用は(制度上はともかく)早期化・長期化し、大学は4年間、十分に学生を教育できない。企業は大卒者を採用しても即戦力にはできず、企業内で社会人教育をせざるを得ない。
 こうした現状を打破し、大学の学びと社会を緊密に連動させ、特に成長分野で、高度な実戦力と社会人基礎力を兼ね備えた人材を早い段階から鍛え上げる施策として「新たな高等教育機関」の設立が掲げられている。

●産業界との連結が最大のポイント

 重要なのは、新機関のこうした理念を制度上にどう落とすかという点である。ポイントは「既存の大学と同等の価値を産業界との連携によって実現すること」に尽きる。
 今回の報告案では、教員については「研究上の能力・実績に基づく教員と並び、実務卓越性に富む教員を積極的に位置づける」とする。だが、各委員からは、むしろ実務家教員が主体でアカデミック教員「も」いるくらいの表現が適当ではないかとの指摘があった。
 また、設置にあたっては「企業等や経済・職能団体、地域との関係機関との連携により、教育課程を編成・実施する体制の整備を義務付ける」との記述がある。これに対し、産業界には設置段階からの参画を義務付けるべきではないかとの意見が出されている。
 インターンシップについても、大学のカリキュラムに組み込むことや、十分な時間や単位数の確保についても、より具体的に記述すべきとの指摘があった。 
 特別部会の議論は先に挙げたスケジュールで動くが、並行して、年度をまたいで産業界へのヒアリングやパブリックコメントの収集・検討などが予定されている。

第12回は2016年3月15日(火)の開催予定です。