2016.0125

「新たな高等教育機関」の行方 その5

学生募集・高大接続

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3行でわかるこの記事のポイント

~中央教育審議会「実践的な職業教育を行う新たな高等教育機関の制度化に関する特別部会(第9回)傍聴報告~

●新機関の制度化に向けた骨子素案を検討

 今回の特別部会では、文科省から「社会・経済の変化に伴う人材需要に即応した質の高い専門職業人養成のための新たな高等教育機関の制度化について」の骨子素案が出された。
 素案では、新機関の設立目的である2本の柱の1つ「地方創生への寄与」についての記述が減った。これには多くの委員が反応し、新たな高等教育機関が地方や地域産業を支える人材育成に資するものであると骨子に盛り込むよう求められた。
 もう一方の柱、「産業構造の変化に対応した人材育成」に関してはより議論が深まった印象だ。新機関が産業界の求める高度な職業人を育てる魅力的な機関であり、そこを明確にすることにより、既存の高等教育機関と差別化していく方針が確認された。
 相変わらず「既存の大学でもできる」「大学改革の枠組みで考えるほうがよい」という意見もある中、「産学連携がビルトインされること(長期インターンシップ等)」や「社会人による学び直しの機会にすること」によって新機関の強みを出していこうという方向性が見えてきたように思える。

●大学体系への位置付けとは何か

 制度化の方向性では改めて「大学体系への位置付け」が議論となった。短期大学のように「大学」という大きな枠組みの一部として考えるのか、一条校として大学と並立する「全く新しい機関」として考えるのか。この議論では、既存の大学の「下」に見えないようにする、高校生や保護者などステークホルダーにとってわかりやすく魅力的なものにする、といった観点から決定すべきとの意見が出た。次回以降、文科省から改めて、高等教育機関全体の中での新機関のポジショニングが明示されるはずだ。

●「研究」「専門」の意味

 骨子を検討するに当たり、言葉の細かい定義も点検され始めている。
 例えば、新機関では「教育機能に重点を置くが、機関の目的には『研究』も含める」としているが、ここでいう「研究」は、大学や大学院で研究者が行う「研究」ではない。職業実践の中で必要となる理論の構築を称して「研究」としている。
 これと同様に、骨子で多用される「専門」という言葉も、従来の高等教育機関におけるアカデミックな意味合いとしての「専門」ではなく、あくまで「特定職業の専門性」という意味である。
 このような細かい目線合わせをしながら、新機関の制度化に向けての準備は今後も進んでいくだろう。
 新機関の名称については、素案では「たとえば『専門職業大学』のような名称が考えられる」という記述に留まる。他に挙がっている案は「専門職大学」「専門大学」など。いずれも「専門」「大学」というワードで構成されており、この方向で着地する可能性が高い。

第10回は2016年2月12日(金)の開催予定です。