2015.1209

「新たな高等教育機関」の行方 その4

学生募集・高大接続

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3行でわかるこの記事のポイント

~中央教育審議会「実践的な職業教育を行う新たな高等教育機関の制度化に関する特別部会(第8回)傍聴報告~

●落ち着いてきた議論

 新たな高等教育機関を議論する特別部会も8回目となり、粛々と議論が進むようになった。当初の、異論が噴出し、毎回着地点の見えなかった頃が嘘のような進捗だ。文科省も、今回の部会がうまく進まなかったときに備え、年内に予備日を用意していたらしいが、「これで皆さん、冬休みに入れますね(永田部会長)」との発言が示す通り、年内の部会はこれで終了。制度化に向けて順調に進んでいる印象だ。

●やはり「大学」なのか

 内容に関しては「大学色」が一層、強まった。今回の論点の一つ「他の教育機関との関係」の項でも、文科省の資料にはこう記されている。

  • (大学等との連携教育)大学等と新たな機関との連携教育等を促進するため、これらの機関の間における修業年限の通算や、相互の転学、単位互換等を可能とする仕組みを整備する

  • (大学等による併設)既存の大学・短大を設置したまま、当該大学・短大の一部の学部や学科を転換させる等して、新たな機関を併設することも可能とする。

 これらに対して、「短大がこの機関を設置するのは難しいのでは?」「モジュール的な接続は海外にも例がない」などの指摘はあったものの、連携や併設そのものへの異論はほぼない状況だ。「大学色」は日に日に強まっている。

●最大の肝は産業界との連携

 制度化に向けた最後の議論は「産業界との連携」。これこそが新たな高等教育機関最大の特徴といえ、既存の教育機関との差別化ポイントでもある。現状の産学連携が、大学にとっても企業にとってもほぼメリットがなく、特に企業にとっては「社会貢献」に過ぎないという指摘は、特別部会でもさんざんされてきた。
 その解消に向けた切り札の一つとして考えられているのが「長期インターンシップ」。ここは全委員共通の認識といってよく、今のインターンシップの課題をどのように乗り越えるべきかの議論がされている。「インターンシップ後の当該企業への就職」や「企業へのインセンティブ強化」「学生への報酬付与」など、今はタブーとなっている部分をどう切り崩していくかがカギを握りそうだ。

次回は2016年1月20日開催予定です。