2015.1124

地方創生に果たす大学の役割

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~日経地方創生フォーラム(大学編)「地方創生に果たす大学の役割」参加報告~

 日本経済新聞社は2015年11月19日(木)、「地方創生に果たす大学の役割」についてのフォーラムを東京・大手町で開催し、会場は約650人の参加者で満員となった。


●大学を通じた地方創生への国の取り組み

 冒頭、石破茂 地方創生担当相は、地方創生に関して大学に期待する点は2つあるとして、
地域に役に立つ人材を育てる実学の推進と、産官学の枠組みのなかでの地域の将来計画への参画を求めた。
基調講演に登壇した文部科学省 高等教育局長の常盤 豊 氏は、COC+の地域貢献度を評価する軸を、地元への卒業生の定着・活躍人材輩出度などであるとし、進行中の中等教育・大学入試・大学教育の三位一体改革を通じて、地方で活躍する人材輩出が必要であると述べた。


●首都圏の大学が地方創生に果たす役割

 続いて特別講演に移り、東京農業大学 学長 髙野 克己 氏、大正大学 地域創生学部 学監 柏木 正博 氏、関東学院大学 副学長 出石 稔 氏、東洋大学 副学長 松原 聡 氏、東海大学 学長 山田 清志 氏の5大学の先生方がそれぞれ登壇し、意見を述べた。

 東京農業大学の高野学長は、地方と都市をつなぐ同大学の役割について、主体的に活動する学生の割合を上げていきたいと述べた。大正大学の柏木学監は、「これからの大学は、自らの立ち位置と特色を明確化できないと淘汰される」とし、首都圏に立地しながら地域人材を育成する地域創生学部(2016年度開設)の準備状況について報告した。

 関東学院大学の出石副学長は、同大学「社会連携センター」の活動紹介を中心に、今後の県内中小企業との連携を拡大する考えを示した。また、東洋大学の松原副学長は、産学間連携によるICTを活用した教育と新たな地域づくりについて同大学の支援事例を紹介したうえで、産学間連携を持続的に進めていく必要性を強調した。最後に、東海大学の山田学長は、同大学が進める「パブリック・アチーブメント型」教育(ボランティア実践による課題の発見と自治体等改善提案)の実践と展開について、将来の単位必修化を計画していることを明らかにした。

●産学官連携による地方創生の実現

 フォーラムでのパネル・ディスカッションでは、内閣府 まち・ひと・しごと 創生本部 事務局次長 佐野 太 氏(文部科学省 大臣官房審議官(高等教育担当))をモデレーターに迎え、5大学の出席者による活発な討論が展開された。地方創生における大学の役割は、技術提供と人材育成であり、産学官連携事業の発展にはサステナビリティとファイナンスが重要であるという議論が展開された。

●求められる地方創生への大学の貢献

 このフォーラムを通じて感じたのは、国立大学のミッションの再定義により地域貢献を義務付けられた国立大学は、積極的に産学官連携を図っていくだろうということと、地方の私立大は、地域連携を担当する副学長を中心に、企業や自治体と自由に関係づくりができるパワーが必要だということだ。
地域創生の目的に資するためには、産学間連携の個別事業そのものの成功とともに、その事業を地方で担い、地域に役立つ創造力と実績を拡大し続ける人材を生み出し続けることではないかと思う。