2016.0317

データ活用における産学官連携と今後への課題

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3行でわかるこの記事のポイント

~データマネジメント2016 - データ駆動こそがビジネスを創る -参加報告~

一般社団法人 日本データマネジメント・コンソーシアム(JDMC・代表 粟島 聡 株式会社 NTTデータ 代表取締役副社長執行役員)は、2016年3月11日(金)、年次カンファレンス「データマネジメント2016」を東京・目黒の雅叙園で開催した(後援 経済産業省ほか)。
4会場で計32社の事例紹介セッションが行われたが、そのなかから株式会社 ローソン の産学連携事例講演を紹介する。


●産学官連携を実施する際の企業側の難しさ

 株式会社 ローソン からは「データ活用における産学官連携と今後への課題」と題して発表があった。同社は、顧客の日々の購買データや店舗運営に関わるさまざまなデータを蓄積している。 

 まず、同社の産学官連携の考え方を説明するうえで、Times Higher Educationの世界大学ランキングでは、日本の大学の国際的評価が低いことを示した。そのうえで、効果的な産学連携ができれば、同ランキングの評価指標の9割以上を占める教育・研究・論文引用回数にも直接的な影響を与えることができるのではないかと述べた。ただし、文部科学省の経年調査「大学における産業連携等に関する調査」から、産学連携件数の伸び率にくらべて特許保有件数の伸び率が少ないことを示し、全体として効果的な産学連携が実際になされているかと問題提起した。
 さらに同社は学・官へのヒアリングを実施して、産学官のそれぞれに、連携の考え方に微妙な差があると感じたという。「学」は人材育成への寄与を期待し、「官」はまず協業すること自体に意味があると考えるが、「産」にとっては、人材育成への寄与だけでは企業側の投資意欲と体制は整えにくいと述べた。

 同社にとっては、ともすれば購買データのような企業活動中枢の機密データの外部閲覧・使用を伴う産学官連携は、将来のビジネスメリットを生まなければ逆に企業リスクとなる。そこで同社は、「産」がリードして産学官連携のアウトプットとしてのビジネスインパクトや明確なゴールを示す必要を指摘した。

●「産」主導の連携成功事例としての「エコ店舗」

 続いて具体的な事例の紹介に入り、同社と東京大学生産技術研究所の連携による「『ローソン店舗のCO2排出量削減』産学共同研究」の紹介があった。同社が「エコ店舗」と銘打つ「CO2排出削減と店舗運営の効率化」という課題を示し、大学がモデル店舗に関するデータの解析を行って、人工知能によるエアコンの使用と停止・店舗窓の自動開閉などの制御を実施した。また両者とは別に、同社が協業する別の民間会社がセンサーの設置等のハード面の整備を担当した。

 この結果、モデル店舗の2010年度の電力量は、2009年度比で7割の削減を達成し、その後もさらに対前年度電力量を削減していったという。

「エコ店舗」の事例は同社のグループ企業行動憲章にある「環境保全」に基づいた「産」主導の取り組みだが、同社は報告の最後にあたり、産学官連携で「官」が主導する場合は、参加する企業や大学等の役割の明確化が必要であろうという意見を付け加えて、講演を終了した。