2023.0118

共通テスト予想平均点は前年と比べ文系+24点、理系+31点

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3行でわかるこの記事のポイント

●ベネッセと駿台予校が約40万人の自己採点結果に基づき算出
●前年、大きく下がった数学ⅠA、数学IIBはともに20点近い上昇
●国公立への積極的な出願で私大併願校検討の優先度は下がりそう

1月14、15の両日、3回目となる大学入学共通テストが実施された。ベネッセコーポレーションと駿台予備学校が提供する同テスト自己採点集計「データネット2023」は17日夜、全国の高校から回収した自己採点データに基づく予想平均点を発表。予想平均点は、文系5教科8科目(900点満点)が532点(前年から+24点)、理系5教科7科目(900点満点)が544点(同+31点)と、いずれも前年から上昇した。データネットでは今後、予想平均点と志望動向等の情報を発信。各高校はその情報を活用しながら出願指導を行う。

*「データネット2023」の平均点情報はこちら
*記事中、平均点の前年差は2022年度センター発表平均点(最終集計)との差を四捨五入したもの。


●化学、生物は今回も平均点が低く物理との差が大きい

 前年、センター試験時代も含めて平均点が最低となった数学Ⅰ・数学Aは56点で18点上昇。数学II・数学Bも61点で18点上昇した。
 一方、前年、平均点が大きく下がった理科2科目は、化学49点(前年から+1点)、生物39点(-10点)と、今回も高難易度となった。物理の平均点63点(+2点)との差が大きく、得点調整の可能性もある。
 前年との差が比較的大きいのは日本史B 60点(+7点)、倫理・政経61点(-9点)、英語(リーディング)54点(-8点)、世界史B 59点(-7点)、政治経済51点(-6点)など。科目合計の平均点は文系、理系とも上がったが、科目ごとに見ると前年より易しかったとは言えないようだ。
 国語は前年より4点低い106点、英語(リスニング)は 3点高い63点となっている。
 これらのデータは高校から提供された約40万人分の自己採点結果を基に算出された。ベネッセはこのデータに志望動向も加味して分析。19日からエリアごとに高校教員を対象にした説明会をオンラインで開催し、分析結果をフィードバックして出願指導を支援する。

●既卒生の出願は前年から7%近い減少

 大学入試センターの発表によると、今回の共通テストの志願者数は51万2581人で、前年から1万7786人(3.4%)減少。現役生は前年より1万2496人(2.8%)少ない43万6873人、既卒生は5143人(6.7%)少ない7万1642 人。全体に占める現役生の割合は、前年から0.5ポイント上がって85.2%となった。現役生のうち共通テストに出願した者の割合を示す現役志願率は、過去最高となった前年と同じ45.1%。

●次年度以降の募集広報の要所は「低学年」と「高校教員・保護者」

 高校生の志願動向に詳しいベネッセコーポレーション高大接続戦略部の仁科佑一氏は「共通テストの平均点上昇により、受験生は第一志望の国公立大学や上位私立大学に積極的に出願するだろう。私立併願校の検討は優先度が下がり、多くの私立大学にとっては駆け込み出願が見込めず、歩留まりも読みにくくなりそう」と指摘する。そのうえで、「定員充足の見通しが厳しい大学は、今からでも間に合う追加の広報施策を早急に検討する必要がある」と助言。その際の訴求ポイントとして「後期入試の募集人員の多さ」「受験料の安さ」など、「わかりやすく、響くもの」を挙げる。
 同氏はさらに、次年度以降の学生募集について次のように述べる。「共通テスト後の今のタイミングのように短い期間で出願先を選ぶ場合、低学年の時から知っている大学、先生や保護者から勧められた大学など、安心感が決め手になる。こうした安心感を受験生に与えるには、低学年からのアプローチや高校教員、保護者に対する情報発信の積み重ねが重要だ」。
 同氏は共通テストの内容にも着目する。「出題方針、傾向がセンター試験とは大きく異なることがはっきりした。そのため、私立大学専願層にとっては、一般選抜とは別の対策が必要になる共通テストを受けるメリットは少ない。今後、受験人口の減少に加え、共通テスト利用方式の出願者の減少が私立大学の学生募集に重くのしかかってくるだろう」。
 私立大学に対して、「共通テストの問題と自学の一般選抜の入試問題を比較してみてほしい」と助言。「自学の問題が共通テストの出題傾向に近い、または今後近づけていくのであれば、国公立大学の併願校というポジションをアピールできるはず。出題傾向が大きく異なる場合は、共通テスト利用方式による志願者獲得の優先度を下げ、一般選抜の日程見直し、総合型選抜や指定校推薦へのシフトなど、募集戦略を再検討すべきだ」。