2016.0210

職業実践専門課程等を通じた専門学校の質保証・向上の推進事業

学生募集・高大接続

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~学校法人敬心学園「平成27年度文部科学省委託事業合同成果報告」参加報告~

学校法人敬心学園 日本福祉教育専門学校(小林 光俊 理事長 本校舎:東京・高田馬場)は、2016年2月8日(月)、平成27年度文部科学省委託事業の成果報告会を東京・市ヶ谷の私学会館(アルカディア市ヶ谷)で開催した。


 同学校法人は、文部科学省の「平成27年度 成長分野における中核的専門人材養成の戦略的推進事業」を2事業、および「職業実践専門課程等を通じた専修学校の質保証・向上の推進事業」を1事業受託し、調査研究に取り組んできている。

 この報告会は三部構成で、第一部・第二部ではそれぞれ、「成長分野等における中核的専門人材養成の戦略的推進事業」の受託テーマである「国際通用性を備えた地域版介護人材養成プログラムのモジュール型開発プロジェクト」・「介護分野における社会人や女性の学びなおし教育プログラムの開発と実証」の報告が行われた。

 ここでは、第三部の「職業実践専門課程等を通じた専修学校の質保証・向上の推進事業」*の受託テーマである「介護福祉士に特化した第三者評価システムの評価項目に基づく各養成施設への評価実施とその成果実証」事業の成果発表について報告する。第三部には大学・専門学校関係者など約50人が参加した。
*同学校法人の取り組みは、(Ⅲ.「職業実践専門課程に係る取組の推進」)(ii.「職業実践専門課程」の各認定要件等に関する先進的取組の推進)にあたる

●専門学校の職業教育の評価の在り方を考える

 学校法人敬心学園 日本福祉教育専門学校は、1984年に創立し医療・福祉分野の人材育成を担ってきた。創立以来15,000人を超える卒業生が現場の第一線に輩出している。入学に際しても、高校卒業以上、大学卒業以上・実務経験者を対象とした多彩な学科が編成されており、幅広い専門教育を行っている。

 同専門学校の「介護福祉士に特化した第三者評価システムの評価項目に基づく各養成施設への評価実施とその成果実証」事業は、専門特化した分野の職業教育における第三者評価の在り方を調査研究しているものである。

 冒頭、同学校法人の小林 理事長から挨拶があった。同理事長は、ヨーロッパやオーストラリアへの視察経験から、我が国においても、第三者評価の構築に当たっては産業界のニーズを取り入れたシステムが必要であり、介護福祉士を目指して学ぶ生徒の学修成果が評価され責任と決定権を付与されることで、はじめて職の専門性が確立され社会的評価を受けると指摘した。

 続いて同事業の概要説明と事業実施内容の報告があった。同事業は2014年度から2016年度までの期間で、日本福祉教育専門学校を中心に4専門学校・6大学・3民間団体と大学評価・学位授与機構による実施体制を組み、3専門学校がそれぞれ受審モデル校となって、介護福祉士養成分野における専門学校第三者評価の評価項目の策定と実施体制の構築をめざすものである。

 事業2年目にあたる2015年度は、第三者評価項目案の最終決定と、第三者評価マニュアル(基準要綱、実施要項、手引書)、自己点検・自己評価報告書等の作成が実施され、専門学校外部の委員を含む評価担当により、3受審モデル校の第三者評価試行評価が実施された旨の報告があった。

 報告に続いて、「自己点検・自己評価、第三者評価を実施して~受審校と実施者によるパネル・ディスカッション~」と題する討論があった。3受審校と3人の評価担当者代表が登壇し、自己点検・自己評価、第三者評価試行評価を通じて表面化したことと今後の課題について、それぞれ発言があった。

 東京YMCA医療福祉専門学校(東京・国立市)は、他者の目で診断を受け自校の姿をあぶりだすことが受審した最も大きな理由であると述べた。評価者は生徒とも1時間近くの面談を行っているが、教員・卒業生との面談も実施することが今後の課題であるとした。

 東京福祉専門学校(東京・江戸川区)は、評価を受けるには書類作成など多くの苦労があったが、受審メリットのほうが多かったと述べた。それは、職員間で自校の特色をあらためて共有できたこと、また、評価者の生徒面談において生徒自身に学修に対する気付きが見られたことなどである。学校どうしのピア評価による質向上の可能性を感じたとも述べた。一方、改善点として、多忙な学修スケジュールのなかでの生徒の面談時間の確保をあげた。

 大阪保健福祉専門学校(大阪・大阪市)は、看護分野と介護分野の連携授業を実施していることが特色である。異なる分野の専門性を尊重した教育が実施しやすい自校の特色を、今回の受審を通じてあらためて感じたと述べた。

 一方、試行評価を実施した側のコメントは次の通りであった。

 東京YMCA医療福祉専門学校の評価者は、教員と学生がチームの一員であるように感じたと述べた。

 東京福祉専門学校の評価者は、「今日も笑顔で挨拶を」の看板が至る所に掲げられていることや、清潔を保つ基本の掃除活動を重視するなど、人間教育重視の点が際立っていると述べた。将来必要となるチーム力の育成が、グループワーク授業として設けられている点も特色であるとした。一方、受審校・評価者の負担を減らすための評価の効率的なスリム化が必要であること、評価する側の根拠の明示や、評価により明らかになる学校の特色を外部に広報していくことの重要性を指摘した。

 大阪保健福祉専門学校の評価者は、教育体制が整い生徒の海外研修もあること、教員の質向上としての相互授業参観が良い点であると述べた。また評価の主眼について、教員の教育成果とその評価根拠の重視、および評価する側の基準を一定に保つことが重要であると述べた。

 結びに総括討議が行われ、フロアからは、第三者評価実施要綱には守秘義務の明記が必要であること、また専門学校の実学教育の魅力をもっと社会に知らせることが必要だとの発言があった。司会者からは、高齢化社会に向けて介護・福祉職が今後果たす役割は重要であるから、第三者評価システムを確立し、介護・福祉関係者は自信を持って社会に自校の評価を発信すべきであるとの総括があり、本報告会を終了した。

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