2015.1116

「新たな高等教育機関」の行方 その3

学生募集・高大接続

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3行でわかるこの記事のポイント

~中央教育審議会「実践的な職業教育を行う新たな高等教育機関の制度化に関する特別部会(第7回)」傍聴報告~

●「大学」を意識した議論が増える

 新機関の制度化に向けた議論が進んでいる。今回は文科省が用意した6つの論点の内、5つまで議論された。

 特徴的なのは、資料にも「大学設置基準の水準を考慮の上...」「これまでにない大学教育を行う機関で...」等の表現が見られ、委員からも「大学」を意識した発言が増えたこと。あくまで「新たな高等教育機関」としていたところから一歩踏み出した印象を受けた。

 議論の内容も「そもそも論(なぜ、この機関が...)」がほとんどなくなり、各論点への具体的な指摘が多くなった。

●実務家教員に確かな立ち位置を

 最初の論点「教員組織、教員資格」では、今回の教育機関に不可欠の実務家教員について、保有資格や実務上の業績などの資格審査方法等が議論された。議論の中で、従来のアカデミック教員の下に見られないように配慮すべきといった指摘があり、その重要性が再確認された。

●大学水準の施設・収容定員

 専任教員数や施設・設備、収容定員に関しては、文科省の資料に「大学・短大の設置基準(を考慮の上)(と同等にし)(を踏まえ)」といった表現がずらりと並ぶ。「新たな高等教育機関」は大学と対にして考えるもの、という文科省の意向が強く伺える内容といえる。

●入学者の受け入れと質保証

 AP・入試に関しては、別途「高大接続改革」が進んでいることもあり、その流れに準ずるというレベルにとどまる。一方、質保証では、既存の大学に対する質保証(設置認可、情報公開、認証評価)への批判がなされ、この際、一から作ってはどうかという指摘もあった。


●「文科省モデル」ができる可能性も

 研究機能に関しては、「教育」に重点を置くものの完全に「研究」を除外せず、教育の質向上を図るためにも、目的の1つとして「研究」も含むとしている。
 一方、対象分野に関しては「制度として、職業分野の限定は行わない」としながらも「大学制度上、特別の課程を制度化し養成している分野(医師・歯科医師・薬剤師・獣医師養成等)を除く」としている。これには賛成の立場の委員が多いが、一部から「等」を問題視する声が挙がっている(福祉や保育等はどうする?)。曖昧な領域のものに関してはグレーのまま進行しそうな雰囲気ではある。
 また、設置者は国・地方公共団体・学校法人としている(なお、株式会社立も除外せずということはこの場で確認)。ここでは、国立もありということなら「文科省モデル」をつくり国がリードしてはどうかという意見があった。

 次回は12/7(月)。文科省が挙げている最後の論点「他の高等教育機関との関係、産業界との連携」が議論される予定だ。