2015.1029

「新たな高等教育機関」の行方 その2

学生募集・高大接続

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3行でわかるこの記事のポイント

~中央教育審議会「実践的な職業教育を行う新たな高等教育機関の制度化に関する特別部会(第6回)」傍聴報告~

●制度設計に向け、論点が具体化

 中教審の「新たな高等教育機関」設置に向けた特別部会は6回目(10月21日開催)を数え、10月は2度目の開催となる。

 今回も前回に引き続き、制度設計の議論が行われている。だが、比較的自由に議論がされていた前回と異なり、今回は文科省から「論点」と称する具体的なたたき台が用意され、そこを集中的に話し合う形を採っている。「論点」は「育成する人材像」「修業年限」「学位」「カリキュラム」等で、それぞれ実際の制度設計をにらんだ記述がされ始めている。

●新機関が育てるのはリーダーなのか

 文科省の「論点」その1は「育成する人材像」。「成長産業等で必要とされる人材(国際競争力の強化)」と「地域産業の活性化を担う人材(地域創生)」という全く異なる2種類の人材の養成が明記されている。

 文科省はこれらの分野のリーダー・経営層を養成するとしているが、ここに異論が唱えられた。リーダーではなく、当該職業分野の中堅・中間層を担う「プロフェッショナル」「仕事人」を育てるべきとの指摘が多くの委員からされた。議論の中で、そうすることで、成長産業では日本の、地域産業ではその地域のボトムアップにつながるという意見が大勢を占めた。

●曖昧だった「身に付けさせる能力」

 新たな高等教育機関で学生(生徒)が身に付けるべき能力については、曖昧な記述が多く、疑念が寄せられた。

「既存の職業教育より"更に"高度化」「"更に"実戦力強化」「"ある程度の範囲"をもった形で設定した産業・職業分野において~」といった記述により、既存の教育機関との差別化を図るとの説明があった。だが、これでは専門学校や大学と差別化ができない、設置基準を満たしているかの審査ができないという声が挙がり、より具体的な記述への変更が求められた。

●2年+2年の修業年限の意味

 修業年限に関しては、「学士相当の学位取得に導く機関」では原則を4年とし「4年に前期・後期の区分を設けることも可」、「短期大学士相当の学位取得に導く機関」では「2年または3年」としている。

 話題になったのは4年間を「前期」と「後期」に分ける考え方。社会人や大学からの編入を想定した設定だが、単純に前期を教養、後期を専門とするべきでなく、どの段階で入学しようと、当該教育機関の卒業生は「その職業に必要な教養」が習得できている設計にすべきではないか、という議論がされた。

●実践的な教育方法の中身

 教育方法に関してはかなり明確に方向性が打ち出されている。義務化事項として、科目全体の4~5割を演習・実習科目にすること、長期インターンシップ(必要修業年限はこれから)を履修させることなどが挙がっている。

 これらには特に異論はなく、産業界との連携は、産業界からの教員への登用も含め、必須との見解が示されている。

 特別部会の次回開催は11月13日。今回の議論をさらに深めていく。