2015.1013

「新たな高等教育機関」の行方 その1

学生募集・高大接続

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3行でわかるこの記事のポイント

~中央教育審議会「実践的な職業教育を行う新たな高等教育機関の制度化に関する特別部会(第5回)」傍聴報告~

●ようやくエンジンが掛かり始めた議論

 中教審では、日本経済再生本部の日本再興戦略でも重要な位置づけとしている「新たな高等教育機関」の設置を巡る議論が続いている。

 2015年度の特別部会も5回目(10月2日開催)となり、夏までのブレストに近いものから一歩踏み込んだ内容へと変わりつつある。事務方の推進体制も、高等教育局から生涯学習局も含めたプロジェクトチームへと移行し、月1回の開催だったのが10月は2度の開催になるなど、ようやく本格稼働し始めた印象だ。

●大学卒と同等の称号が与えられる?

 今回は学位と修業年限に関する議論が中心。学位に関しては、卒業生にはやはり「学士」を与え、新機関が大学と同等の教育機関として、国際的にも通用するものにすべきという意見が何人かの委員からあった。これに対し、永田部会長からは「学士という名称にはこだわらないが、卒業生が国際社会でも認められることは大切だ」という発言がされた。大勢としては「学士」というより「学士と同等の称号」が与えられる、という流れのようだ。

●長期インターンシップ込だと、2年では足りない?

 修業年限に関しては、2年+αという形になりそうだ。この高等教育機関では産業界と密接に連携し、長期インターンシップをカリキュラムに組み込むことが前提に考えられている。その期間を考慮すると2年では十分な職業教育が行えないだろうという見方が強い。

ただし、その+αが何年かというと、産業分野によって必要な育成期間が異なるし、社会人の受け入れも積極的に行うという観点からも、一律に制度化することは難しい。モジュール型にして、修業年限も可変にするなどの工夫が必要だとの見解が示されている。

●今後の論点・スケジュールは?

 これまでの議論で、委員たちの目線が揃ってきているかといえば、そうともいえない。「既存の大学組織の改革・改善によって、今回めざすところのものは実現できる」という意見も根強く残っている。また、育てる人材像についても、委員により明らかにイメージが異なっている。

 そんななか、現状、合意形成が図られつつあるのは以下の内容だろう。

・研究ではなく、産業直結の職業教育機関

・大学体系での設置

・大学卒と同等の称号付与

・2年+αの修業年限(モジュール型?)

・長期インターンシップを含むカリキュラム

 これらにしてもまだ確定というわけではないし、内閣改造もあり不透明な部分も多い。とはいえ、このあたりをベースに今後の議論が進むのは間違いなさそうだ。

特別部会の次回開催は2015年10月21日。制度設計についての議論をより具体的に進めていく会になる。