2015.0811

立命館大学

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3行でわかるこの記事のポイント

2016年度までに新多面的入試の評価軸を検討

面接の得点と入学後の成果との関係まで踏み込んで分析

 立命館大学は、文科省の高大接続改革実行プランの工程表に対応できるよう、2016年度末までの2年分のロードマップを作り、多面的評価の軸についての検討を始めている。現行の入試制度の検証と総括を行い、特色ある高校教育の評価について研究する教職協働のタスクフォースで、新入試の素案を作る。

 入試センターの宮下明大次長は、「関西の他大学と同様、本学の一般入試では日程ごとに全学統一の問題を作っているため、学部ごとのアドミッション・ポリシーに基づく選抜はなかなか難しい」と説明。APの明確な反映は、自ずとAO入試が担う形になるという。現状、ほとんどの学部がAO入試を導入しているが、学部によってTOEFLの基準点に微妙な差が設けられているなど、明確な説明ができないばらつきがあるという。本質的でない部分で受験生が悩んだり迷ったりすることがないよう、タスクフォースの検討を通してある程度の共通フレームを作りたい考えだ。

 AO入試の成果検証も課題の一つ。入試区分ごとの入学者のGPAや就職状況等の追跡調査は実施しているが、今回は面接やグループディスカッション等、選考過程での得点と入学後のパフォーマンスの関係まで踏み込んで分析する。選考の評価シートは全学共通の様式を使っているが、評価と配点の方針は学部任せになっているため、その妥当性を検証したいという。

 新たな入試としてまず実現しそうなのが、英語の外部試験の活用。2016年度入試で、英検やTOEFL等の成績を一般入試、AO入試の英語の得点に換算する制度を設ける予定だ。中期的な目標として国際バカロレア(IB)の修了をAO入試の出願要件に加えるため、IB認定校である附属の立命館宇治高校の協力を得て、入試におけるIBスコアの評価のあり方について検討する。同様に、スーパー・サイエンス・ハイスクールやスーパー・グローバル・ハイスクール等、高校での探究的学びの成果をどう評価するか、研究を深める。

新共通テストの段階別評価の実効性は慎重に見極める

 宮下次長は、文科省が打ち出した入試改革の理念と方向性に、基本的な賛意を示す。「教科・科目の知識をマークシートで答えさせ、1点刻みで評価する一発勝負型の入試は、大学にとっても受験性にとっても限界に来ている。双方にとってより納得性の高い入試に変えていくべき」。

 ただし、近い将来、一般入試を全廃することには懐疑的だ。一般入試の志願者数が大学の評価につながるような社会の価値観が厳然としてある以上、「その土俵から降りることはまだ考えられない」という。同大学で、全定員のどの程度を多面的・総合的評価による入試に移行するかも、入試全体のあり様から考えるべきとの立場だ。

 大学入学希望者学力評価テスト等、文科省が具体化する新たなシステムについては慎重に見極める。「現在、本学が個別試験なしで実施しているセンター利用入試の出願者約3万8000人を、新共通テストの段階別評価によって選抜できるのか。あるいは、個別学力試験を課さないといけないのか。その辺がまだ見えず、具体的な対応は決められない」(宮下次長)。

 アドミッションオフィサーが入試の一部を担う体制への移行は、同大学のグローバル化の方向性と一致するという。宮下次長は「どういう物差しでどういう評価をするかさえ明確にし、主観に依存しない基準をある程度確立できれば、面接も論文もオフィサーが対応でき、最終判定を教授会に委ねればいい。企業の採用面接のように、構造的な手法を確立することが可能なはずだ」と考えている。