年内入試の動向③ 探究学習と多面的評価の親和性~三田国際学園中学校・高校

●探究重視の教育スタイルが年内入試と好相性
●ポートフォリオに蓄積した記録を振り返り、志望理由を言語化
●コロナ禍でオンラインによる個別指導が進む

探究学習をはじめとした21世紀型教育に取り組み、その成果を生かしやすいと、年内入試での受験を積極的に勧めている三田国際学園中学校・高校。ポートフォリオを軸にした指導のあり方と、コロナ禍が与えた影響について聞く。 

*「年内入試の動向」シリーズは9月発行『Between9-10月号の特集「これからの年内入試」の先行掲載です。
年内入試の動向① 指定校推薦の受験希望者が増加~川崎市立高津高校
年内入試の動向② 大学教育を先取りする入試―東北福祉大学


●3分の2の生徒が年内入試で進学

 2015年度の校名変更と共学化を機に抜本的な教育改革を行った三田国際学園中学校・高校ではこの数年、およそ3分の2の生徒が年内入試によって進学している。疑問を基に仮説を立て、検証し、プレゼンテーションを行う知的探究を中心とした授業を展開。教科の授業以外で研究や発表を行う探究活動もある。こうした学びの過程で修得した思考力や主体性は年内入試のほうが評価されやすいため、積極的に受験を勧め、多くの生徒が利用している。
 学習・進路指導部副部長の城野大輔教諭は「年内入試を受けるのは、決して『ペーパーテストが苦手だから』という消極的な選択ではない。中学校からの教育で培った教科学力以外の部分も評価してほしいという積極的な理由からだ」と話す。実際、多面的評価がなされる海外大学を受験する生徒も少なからずいて、毎年1割ほどは海外大学に進学している。
 同校が進路指導のベースとしているのはポートフォリオだ。生徒は中学校入学直後から日々の授業、活動で何をめざし、そのプロセスにどんな気づきや苦労があったのかをオンライン上のポートフォリオシステム「classi」(*1)に記録する。「蓄積した記録を節目節目に振り返ることで高2の冬には『大きなポートフォリオ』ができあがり、生徒は自分の中で軸になっているテーマに気づきやすくなる」(城野教諭)。
 この軸に沿ってその後のキャリアを描き、進路を選択し、志望理由を言語化していく。2年生の冬の時点では箇条書きレベルだが、3年生の春からは各大学の志望理由書の形式に沿ってまとめ、小論文と並行して繰り返し添削を受ける。添削は国語科の教員と年内入試の書類の添削に長けた外部講師が担当している。8月以降は面接の練習も加わる。

●ICTを活用した志望理由書、小論文の指導

 コロナ禍により同校は4月からオンライン授業に移行した。特に3年生の授業は非常にスムーズに進んだという。理由として、2年生の2学期以降は受験指導にシフトしてディスカッションや発表などはほとんどないこと、元々iPadGoogle Classroom(*2)、classiなどを活用し、生徒がICTの扱いに慣れていたことなどがある。 
 授業はZoomGoogle Classroomclassi等で配信。面接の練習はZoomで、志望理由書、小論文の添削はGoogle Classroomを使って行う。オンライン化により、教員の添削は効率化した。ネット上で書類を共有するため生徒、担任、国語科間での紙の受け渡しが不要となり、返却までの時間が短縮。生徒がすぐ修正に取り掛かれるようになった。書類の提出時に生徒がコメント機能を使って「ここがうまく書けなかったので見てほしい」といった一言を添えやすくなり、よりきめ細かな指導ができるようになったという。

●オンライン授業の課題は「自律性の育成」

 6月29日に登校禁止を解除した後も、3年生についてはオンライン受講の継続も認め、7月の段階では、登校しているのは学年全体の20%程度だった。自宅での学習を選択する生徒が多いのは、感染リスクを避けるためだけではなく、オンラインによる指導に不自由を感じていないこともあるようだ。9月からは「対面授業の日」と「オンライン授業の日」に二分して実施している。対面授業の日の登校率は95%だが、オンラインの日は5%にとどまる。
 城野教諭は、オンライン学習が自律性を求める手法であることに着目している。自宅ではサボろうと思えばサボれてしまう。そんな環境で高校生が自律的に学び続けるのは簡単ではない。「現在の3年生に大きな問題は生じていないが、オンライン授業が長期間継続した場合に集中力が続くかはわからない」と城野教諭。大学でも社会でも常に学びながらキャリアを築いていく力が求められる中、コロナの動向にかかわらずこれまで以上に生徒の自律性を養っていきたい考えだ。
 オンライン授業が続いたため保護者も生徒の自律性育成には強い関心を抱いており、カリキュラムの変更などにも理解が得られやすい状況だという。城野教諭は中学段階から自律性を身につけさせるため、週6日の中にオンラインで学ぶ時間や一人で学ぶ時間を徐々に取り入れるという私案も話してくれた。「自律という課題に向き合うことにより、学び続けながらキャリアを築くことに対しても生徒はさらに自覚的になるのではないか」と期待を寄せている。

*1 課題の配布、生徒・教員間のコミュニケーション、ポートフォリオ作成などが行えるWebサービス
*2 課題の作成、配布、採点などが行えるWebサービス