勉強好きになった生徒は調査や発表をする授業を経験―ベネッセ調査

●中学以降は学年が上がるにつれ勉強嫌いが増えるが、「好き」に変わる生徒も1割存在
●勉強好きに変わった生徒は学習時間の伸びと成績向上の実感度が大きい
●大学のアクティブラーニングの情報発信が高校生の意欲を高める可能性も

ベネッセ教育総合研究所はこのほど、東京大学社会科学研究所との共同研究プロジェクト「子どもの生活と学びに関する親子調査2016」の結果速報を発表した。勉強が好きになった高校生は勉強嫌いなままの生徒より高い割合で「調べたり考えたりしたことを発表する授業」を経験していたという結果は、高大接続の改善を図るうえでも示唆を与えている。
速報のプレスリリースはこちら
http://berd.benesse.jp/up_images/research/20170419release.pdf
ベネッセ教育総合研究所のウェブサイトでの詳報はこちら
http://berd.benesse.jp/shotouchutou/research/detail1.php?id=5095


高1、高2の6割が勉強嫌い

 このプロジェクトでは同一の親子(小学1 年生から高校3 年生の約 2 万 1000組)を対象に2015 年以降、複数の調査を実施している。今回の速報版では2015年と2016年の2時点の調査から、各学年の学習の実態や変化を分析。主に学習意欲(勉強の好き嫌い)に着目し、勉強が好きになった児童・生徒の特徴を明らかにした。
 2016年の調査は7月から8月にかけ、プロジェクトの「調査モニター」である親子全員に質問用紙を郵送して実施。回答者は、全国の小学4年生から高校3年生計1万1014人、小学1年生から高校3年生の保護者計1万6013人であった。

 調査結果から高校生の学習意欲を中心に見ていく。
 下のグラフは勉強が好きか嫌いか聞いた結果を示している。小学校高学年以降は「嫌い」が徐々に増加し、中1の45.5%から中2では一気に57.3%になる。高校でも1、2年生の61%は勉強嫌いだが、3年生になるとこれが56.5%に減る。受験勉強を通じて学ぶ喜びを見出す生徒もいると推測される。

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 一方、下のグラフで一人ひとりの変化に着目すると、2015年には勉強が「嫌い」と答えたが2016年には「好き」に転じた子どもが、どの学校段階でも1割前後いる。高校でも約11.9%がこうしたポジティブな姿勢に変化する。

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勉強が好きになった生徒には、明確な目標を持つという変化も

 下のグラフは、勉強の好き嫌いの変化と学習時間、および成績の変化との関係を示している。高校生の場合、学習時間の伸び率は元々勉強が好きだった生徒が121.4%(136.5分→165.7分)で、嫌いから好きに変わった生徒は144.4%(101.2分→146.1分)と、後者のほうがより大きい。「成績が上がった」と自己評価する割合も、元々勉強好きだった生徒は22.3%、嫌いから好きに変わった生徒は33.5%となっている。

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 さらに、下のグラフで、将来の目標が「はっきりしていない」から「はっきりしている」と変化した割合を高校3年生について見ると、勉強が「嫌いから好き」に変わった生徒の27.5%が最も高く、元々勉強好きだった生徒をも上回った。これらのことから、元々勉強好きだった生徒はもちろんだが、勉強が「嫌いから好き」に変わる生徒は特に明確な目標を持って積極的な姿勢で学びに向かい、自らの成長も実感していることがうかがえる。

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 では、どんな要因が生徒を勉強好きに変えるのか。この1年間の学校の授業についてたずねた下のグラフで高校生について見ると、勉強が「嫌いから好き」に変わった生徒の62.5%が「調べたり考えたりしたことを発表する授業」を経験していて、「嫌いなまま」の生徒より9.4ポイント高くなっている。同様に「学校の先生以外の人の話を聞く授業」も5.8ポイント高い。主体性が求められる授業、多様性に触れる授業が学ぶ喜びに気づかせる要因になっていると言えそうだ。

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大学の教学改革と高校生への情報発信が学習意欲を向上させる可能性

 これらの調査結果から言えるのは、「勉強嫌い」が増える中高生の時期でも、学ぶ喜びに気づくような授業を経験したり、さまざまな学習動機や将来の目標を持って勉強したりすることによって、子どもたちは「勉強好き」になり、学習意欲に目覚めるということだ。調査を担当したベネッセ教育総合研究所の橋本尚美研究員は、「勉強が好きであることは、高校卒業後も自ら学び続け、『自立』していくうえで重要な要素。『勉強好きな子ども』を育てるヒントは他にもたくさんあり、学校、保護者、周囲の大人などがどのような環境を整え、支援するかが大切です」と指摘する。
 調査結果は、大学が高校生の学習にどのような影響力を発揮できるかという点でも示唆を含んでいる。近年、大学でも、学生が主体性を発揮して「調べたり考えたりしたことを発表する」授業や、学問と社会とのつながりを実感できるような授業が増えつつある。高校生はこのような学びの実態を知ることで、進学に対する動機づけがなされ、より積極的な姿勢で学習に向かうのではないか。大学の教学改革とその中身に関する情報発信は高校生の学習意欲や進学に対する期待を高め、大学教育へのスムーズな移行を促す可能性がある。


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