高校で広がる2年生の志望校宣言-求められる「大学の情報発信」

●「3年生0学期」における受験生への切り替えがねらい
●面談で「本気度」を問い、書き直しを指示することも
●大学研究を深めながら目標を明確化

近年、高校では2年生3学期のことを「3年生0学期」と呼び、早めに「受験生への切り替え」を促す指導が広がっている。象徴的な取り組みが、この時期の「志望校宣言」だ。2年生のうちから「行きたい大学」について本気で考えさせ、大学の情報を集めさせる。大学情報へのアクセスが本格化するこの時期、大学にとっては自学の名前をしっかりインプットさせることが、最終的な志望校として選ばれるための第一関門と言えそうだ。

*高校2年生で「志望校宣言」を行う進路指導の他の事例はこちら。
http://between.shinken-ad.co.jp/hs/2016/07/kiyota-hs.html
http://between.shinken-ad.co.jp/hs/2016/05/39.html


●所定の書式に志望校・学部・学科、志望理由を記入

 2年生の志望校宣言は学校によってさまざまなパターンがあるが、一例を挙げると次のような流れになっている。
 体育祭や修学旅行など、2学期の大きな行事が終わった後、「3年生0学期」に向けた進路指導がスタートする。11月の模試の結果をふまえて第一志望校を考えさせ、年明けに志望理由と合わせて所定の書式に記入して提出させる。その後、担任が面談を行い、志望理由が明確でなかったり、志望理由と志望校・学部とにミスマッチがあったりする場合には書き直しを指示。生徒は進学情報誌などで大学について調べ、進級前に全員が志望校宣言を完成させる。提出までに何度も書き直す生徒もいるという。
 学校によっては提出させるだけでなく、持ち帰って保護者に見せたり、校長が承認印を押したりと、より多くの人に「宣言」させることによって生徒の本気度を高める。

●目標を持たせて学習意欲につなげる

 高校の進路指導に詳しい進研アド情報戦略部マーケティング企画課の仁科佑一課長は、志望校宣言が広がり出したのは10年ほど前からだと説明する。「従来は3年生に進級してからだった『受験生への切り替え』を2年生に前倒しすることがねらいで、『3年生0学期』の進路指導の中軸とも言えます」。
 背景には、大学の門戸が広がって入りやすくなったことにより、進学の目的意識が希薄になったことへの危機感があるという。「さほど頑張らなくてもどこかの大学に入れるという考えだと、学習意欲がなかなか上がらない。2年生のうちに『行ける大学ではなく行きたい大学』という積極的な目標を持たせ、鼓舞していかなければ、3年生の夏以降の本格的な受験シフトに間に合わないと、先生方が考えるようになったのです」と仁科課長。

●本格的な大学研究の出発点に

 多くの高校にとって志望校宣言の真のねらいは志望校の早期決定ではなく、大学研究、学問研究を深めさせることだという。2年生だと、狭い視野や知識の範囲内で、知名度の高い大学、知り合いがいる大学の名前を安易に志望校として挙げる例も多い。そこから情報収集をスタートさせ、「自分がめざす職業は、この学問分野ともつながっている」「この分野を学べる大学は地元にもいくつかあって、それぞれ特色がある」と気づいて視野を広げ、本当にやりたいこと、学びたいこと、行きたい大学や学部・学科について考えを深めさせることこそが、高校のねらいなのだ。
 大学研究では依然、進学情報誌の活用シーンが多い。大学生に、入学した大学と高校時代に初めて接触したメディアを聞いた進研アドの調査でも、進学情報誌が4割前後と大きなシェアを占めている。
 仁科課長は、「2年生の模試では、記入した志望校のおよそ半分程度は入れ替わります。その時々で得る大学情報から影響を受けてどんどん変わっていくわけです。たとえ一度変わったとしても後々、志望校として復活することも多いし、2年生の時に興味を持った大学というのは、3年生の秋に初めて知った大学よりも想いは強くなるものです」と指摘する。
 2年生の志望校宣言から、大学研究、学問研究を経て「真の志望校決定」へと生徒一人ひとりの着地を支援するためには、2年生3学期に照準をあて、高校の進路指導シーンでの活用を想定した大学からの情報発信が不可欠だ。学びの特色はもちろん、資格取得や就職支援、経済支援などさまざまな切り口から大学を比べられる情報を提供して気づきを促し、一人ひとりにとって最適な選択を支援することが大切と言えよう。

事例 東京都立武蔵丘高校-「大学研究を通して生徒の顔つきが変わる」

●2年生2学期の中だるみを問題視

 東京都立武蔵丘高校は中堅私立大学への進学者が多く、学校案内などでは「中堅上位の進学校」を掲げている。3年間の体系的な進路指導ストーリーの下、「3年生0学期」における「受験生への切り替え」を重視。7年ほど前から2年生の11月と3年生の4月の2回、「第一志望届」を提出させている。
 この取り組みを導入した進路指導部の山﨑次郎教諭は、「2年生2学期の中だるみ防止と受験に対する動機づけがねらいです」と説明する。行事が多く生徒が浮き足立つ2年生2学期は例年、模試の成績が一番下がりがちだという。「以前なら3年生になってからでも挽回できたが今はそれが難しく、いったん下がるとそのまま入試までいってしまう。明確な目標を持たせて学習意欲と成績を下げないようにする必要があります」。

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 11月の模試の後、第一志望校について考えさせ、志望理由と合わせて学部・学科まで記入させる。保護者の署名・捺印をもらったうえで校長、進路指導部長、担任宛に提出する書式になっているが、初回は保護者印がないものを提出させている。これはあくまでスタート地点であり、3年生4月の2回目を「本番」と位置付け、保護者印を付けて提出させる。

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●3年生4月時点の志望校を変えないよう指導

 初回の「第一志望届」提出後、担任との面談をふまえ、生徒は進学情報誌や進路指導室にある大学案内を使って本格的な志望校探しを始める。進学情報誌は、進路指導部がワークシートを使って一人ひとりに合った活用を促す。この時期、すなわち12月から3月にかけての2年生の様子を、山﨑教諭は「3年間のうちで最も顔つきが変わります」と表現する。
 もちろん、「第一志望届」に書いた大学が最終的な出願先になるとは限らず、難易度が高い大学、低い大学、両方の変更パターンがある。それでも、学習の動機づけの仕掛けとして、3年生4月の「第一志望届」には自分の実力より少し上の大学を書くよう促し、以降はその目標を変えないようにと指導する。
 「『焦って決める必要はないよ』とフォローしつつ、『でも、早く決めればそれだけ早く受験体制に入れて有利になる』と説明して真剣な検討を促しています」と山﨑教諭。「今の高校生は真面目なので、途中まで背中を押してやれば、あとは放っておいても自分たちで前に進めます。『第一志望届』は、あくまでも主体的な学習の動機づけとして取り組んでいるのです」と結んだ。