夏休み前後から本格化する進路指導-京都府立南陽高校の事例

●「本人の意思を最大限に尊重」という方針を貫く
●模試で目標を管理し、PDCAを回す
●「結果に一喜一憂しない」と繰り返し指導

高校は間もなく夏休み。どの学校でも、3年生の意識を高め、志望校を絞り込んでいく進路指導が本格化する。その中で、模試やセンター試験がどう位置付けられ、教員と生徒の間でどのようなコミュニケーションがなされるのだろうか。京都の公立高校の事例を紹介する。


クラスで一斉に模試の目標得点と志望校を登録

 京都府立南陽高校は、1学年9クラスで学年ごとの生徒数は約360人。およそ4割弱が国公立大学に進む進学校だ。進路指導部長の松林正嗣教諭は、「大学に合格させることを最終目標にはしません。一人ひとりの能力と適性、希望を尊重し、大学でも社会でも本人が輝けるような選択を支援することが進路指導の基本方針」と説明する。

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 同校では、模試の目標設定→模試受験→復習→目標の再設定という流れで、模試を軸にしたPDCAサイクルを回している。
 1年次の7月、最初の進研模試の前から模試デジタルサービスを活用。ロングホームルームの時間に、クラス単位で目標得点と志望校を登録する。指導の一環として全員一斉に「入り口」をくぐらせることによって、切磋琢磨する意識を浸透させるのが狙い。担任は一人ひとりの志望校を確認する。
 模試の受験後は、自己採点をして復習し、次回の目標設定を行う。2年次、3年次と進級した後も、このサイクルを継続。どのクラスが早く全員の模試の復習が完了するか競う「クラスマッチ」を行うことも。
 2年次の12月には紙に「志望理由書」を書かせる。当初は漠然とした理由、説得力のない理由しか書けない生徒も多く、書き直しを指示すると面談希望者が続出。生徒によっては何度も書き直し、3か月かけて全員が志望理由書を完成させる。「結果的に志望校が固まらなくても構わない。わざと生徒を揺さぶり、とことん考えさせるというプロセスが大事なのです」と松林教諭。

「気にかけてくれている」と、メッセージを歓迎

 こうして、じっくり考えた志望校を登録して臨む3年次最初の模試では、多くの生徒が思うような結果が得られず落胆するようだ。そして、6月には部活を引退。同校では生徒の8割が部活動をしており、引退は受験本番に向かう大きな節目となる。とはいえ、7月模試までに十分な学習時間はとれず、ここでも手応えを得られない生徒がほとんど。担任と進路指導教員は、模試判定に一喜一憂しないよう指導し、安易な志望変更がないよう見守る。模試デジのメッセージ機能を積極的に活用し、一人ひとりに励ましやアドバイスを送る担任もいる。 
 「生徒は私たちが考える以上にメッセージを喜びます。自分のことをちゃんと気にかけてくれていると感じるのでしょう。保護者から『メッセージを励みにしていますよ』と言われることもあります」(松林教諭)。
 1学期の期末試験中、進路指導部と担任で志望校検討会を実施。一人ひとりの志望校とその妥当性を確認する。自分の実力を過小評価して志望校を考えている生徒に対しては志望校の検討範囲を広げてみることを勧めるが、一方、志望校と実力に開きがあると思われる生徒の場合は、モチベーションを大切にするため、そのまま見守るという方針だ。
 夏休みに入ってすぐの3者面談であらためて志望校を確認。9月の模試で成果を出すべく、1日最低8時間の学習を続けるよう指導する。

「私大受験でも重要」と、センター試験を前面に出す

 しかし、9月模試で目に見えて成績が伸びる生徒はそう多くないのが現実のようだ。教員は「現役生の成績はここから伸びる!」と励まし、「今、目に見える成果が得られなくても焦らないように」とあらためて指導する。これ以降、併願を含む志望校の絞り込みに入る。進路指導では「本番まであと〇日」と意識させながら、センター試験を前面に押し出す。「2016年度入試では3年生349人中、98.7%がセンター試験を受験しました。府立の高校の中で受験者が最も多く、共通目標として全体を引っ張るツールになります」と松林教諭。「私大の個別試験でもセンター試験と似た出題をするところがあるし、センター試験だけで合否判定する入試も多い。併願先の私大の受験でも重要な試験だと意識づけをします」。センター試験本番のつもりで毎回の模試に臨み、模試デジによるPDCA管理、教員からのメッセージの集中期となる。
 11月の終わりには再度、進路指導部と担任が志望校検討会議を開き、最終的な志望校を確定。ここでも、やや背伸びをしていると思える生徒についても極力、その意思を尊重しつつ、併願校選びの助言に進路指導のノウハウを注ぎ込む。この会議を経て願書の取り寄せが始まり、いよいよ受験本番へと向かう。